これ以上、何も-2/3-






「…ライトニング」

フリオニールの背中を見守るライトニングの背後から、ウォーリアオブライトが声をかけた…彼らしい、冷静な感情のこもっていない声で。
声をかけられたのに気付いても、そちらを振り返ることはなく…ライトニングはただ、傷つきながらも戦い続けるフリオニールを見守っている。

「フリオニールが倒れたら君が後を引き受けてくれないか」
「…言われなくてもそのつもりでいた」

自分の愛する人が、決して弱くなんかないフリオニールが負けることを前提とされて気分がいいわけはない。
だが、ライトニングにだって分かる。このままでは恐らく、フリオニールはあまり長くは持たない。次にイミテーションの魔法がフリオニールを襲えば…戦うことは難しくなるだろう。
そうなった時に誰かが後を引き受けなければこの場所を通ることは叶わない―
もしも今フリオニールが倒れたなら、他の誰が行くと言っても自分がその後を引き継ぐべきだとライトニングは当たり前のように思っていた。
しかし、ライトニングがそんな覚悟を決めたのとは裏腹にフリオニールは追い詰められたそこからかなり善戦する。
飛来した炎をひらりとかわし、背中の弓を手に取るとイミテーションに向けて矢を放ち、かわされたと見るやすぐに体勢を変えるとその身に纏った全ての武器をその身体の周囲に舞わせ、6つの武器はフリオニールの意思に従うかのようにイミテーションを襲う。
そうしてまたイミテーションに傷を負わせはするものの…フリオニールに反撃が出来たのはそこまで、だった。
イミテーションは攻撃の後フリオニールに生じた隙を見逃さず、空中でひらりと身を舞わせるとフリオニールの正面に炎を放つ。
放たれた炎はフリオニールを巻き込んで爆発し、フリオニールは弾かれたように大きく吹き飛ばされた―

「…フリオニール…!!」

反射的にライトニングは駆け出し、吹き飛ばされ地面に叩きつけられたフリオニールの身体を抱き起こしていた。
その瞳は閉じられているものの表情は苦しげに歪み、傷が痛むのか時折小さく呻く声が聞こえる。

「…いや…だ…」

うわごとのように呟かれた言葉…ライトニングにははっきり聞き取れなかったが、何かを言おうとしているのは分かる。

「…どうした…?」
「何かを失うのは…嫌だ…」

誰かに向けて告げられた言葉ではなく、本当にうわごとのように…きっと今この言葉が聞こえたのはライトニングだけ。
…フリオニールから聞かされていた、彼の過去―元いた世界での話がライトニングの中で甦る。
彼は祖国を、家族を、仲間を、友を…さまざまなものを失ってきた。
そして一度、ライトニングのことも…
ライトニングは無意識に、フリオニールの手をきつく握り締めていた。

「失わせはしないさ…これ以上お前に何も失わせたりしない」

いつもより冷たいその手をもう一度しっかりと握り、フリオニールに…そして自分自身に向かってそうはっきりと言い放つ。
その時背後に聞こえてきた足音―想像通り、駆け寄ってきたのはジタンとクラウドで―ライトニングは抱き起こしたフリオニールの身体を支えながら2人に目配せをした。

「ジタン、クラウド。フリオニールを頼む。その代わりあいつは…私が倒す」
「ああ…行って来い、ライトニング」
「フリオニールのことはオレ達に任せといてくれ。気をつけろよ、ライト」

2人の言葉にしっかりと頷くと、ライトニングは武器を手にイミテーションのほうへと駆け寄った。
フリオニールが…苦手な状況に翻弄されながらもある程度はイミテーションを傷つけていたことが幸いしたようで、この調子ならば…自分よりも強いと明らかに分かる相手ではあるが、うまくやればどうにか倒すことが出来るかもしれない。。


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