男だったらしょうがない。-1/3-
普段彼らは16人で4つのテントを分け合って使っている。
1つのテントに4人、となると必然的にぴったり4人の女性陣は毎日同じテントになるのだが、男性陣は日によって…例えば怪我人がいるとか、ひずみに向かった者がなかなか戻ってこないとか、そう言う理由で毎日同じテントを使う顔ぶれは変わる。
そして、この日同じテントになっていたのは…
「クラウドに相談があるんスよ」
「俺に?」
真面目な顔をしてテントの真ん中で差し向かいに座っているのはティーダとクラウド。
相談がある、と切り出したほうのティーダはどう言えばいいのか逡巡している様子ではあるが、決意したようにぐっとクラウドの両手を握って身を乗り出す。
「オレ、ほんとはもっとユウナにいろいろヤラシイこととかしたいんスよ!!」
ティーダとクラウドがテントの真ん中を陣取っていたので隅の方に追いやられながら水を飲んでいたフリオニールは動揺してその水を吹き出す。
その隣で魔法書を読んでいたオニオンナイトは眉を顰めながらそんなフリオニールを見上げていた。
「ちょっとフリオニール、汚い」
「いや俺じゃないだろ、今のはどう考えてもティーダの発言の方が問題あるだろ」
「確かにティーダもティーダだけどね。突然何恥ずかしいこと言い出してんの」
魔法書のページをめくりながら呆れたようにオニオンナイトが一言。ティーダはそちらに視線を移し、拗ねたように唇を尖らせる。
「お前はまだ子供だから分かんないだけだって」
「子供だから分からないって言うんなら僕はまだ子供でいいや」
再びオニオンナイトが魔法書に視線を落としたので、それ以上の反論はせずにティーダはクラウドの方に視線を戻した。
「でもさ、その…なんて言うかやっぱりユウナが恥ずかしがってるし、ユウナが嫌がることはオレもしたくないし…で、オレ今悩んでんスよ」
「気持ちは分からなくもない」
言われた側のクラウドとしても何と答えればいいのか悩んでいるような様子で、ティーダとテントの上部に交互に視線を送っている。
時々首をひねったり、何かを考えるように頭に手をやったり。
ティーダはクラウドの答えを待つようにじっとそちらを見ている…その視線に耐え切れなくなったのか、クラウドは漸く言葉を紡ぎだした。
「…だが俺はティファにそこまで恥ずかしがられたことがないから…なんとも」
「ただの惚気じゃないっスか、それ」
呆れたようにティーダはひとつ息を吐く。一瞬だけ申し訳なさそうな目でそんなティーダを見たクラウドだったが、その視線はすぐにフリオニールの方へ。
「お前はどうだ、フリオニール」
「え…俺?」
丁度、さっき吹き出した水を拭き終えたところだったフリオニールの表情に、突然話を持ってこられたことによる躊躇いの色が浮かぶ。
話題が話題なだけに一瞬だけオニオンナイトを見遣り…どうやらこちらの話は気にしていないように魔法書に没頭しているようではあったが、あまり大きな声で話すような内容ではないと分かっているためか自分もテントの真ん中へと移動しティーダやクラウドと丁度正三角形を作るような位置に座った。
フリオニールが近づいてきたことでティーダとクラウドは更に距離をつめ、3人はほぼ顔をつき合わせるほどの近距離に陣取って座る。
そして先ほどフリオニールがそうしたように一瞬だけオニオンナイトの様子を窺う…やはり、こちらを気にしている様子はない。
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