いつも通りのその中で-3/3-






「しかしお前は本当に…器用だな」
「逆に器用貧乏だって言われるけど…でも、どんな武器だって特性を掴んで、しっかり戦い方を頭で組み立てていけば使いこなすことはできるさ」

矢を置きながらもう一度弓の弦を弾き、問題がないのを確かめたようにそれを再び他の武器と並べて置く…漸く全ての武器の手入れが終わったのか、立ち上がるとひとつひとつ武器を身につけ始めた。
ライトニングはフリオニールが武器を定位置に納めていくのをじっと見つめていたが、剣以外の全てを装着し終えたところで手にした剣をフリオニールに差し出す。
ありがとうと短く呟いてその剣を受け取ってからいつものように腰に佩き、そして隣にいるライトニングに視線を送ったフリオニールは…柔らかな笑顔で自分を見るライトニングの瞳が何故だかいつもと違っているように見えて、怪訝そうに首を傾ける。

「どうしたんだ、ライト?」
「…お前といると飽きないな、と思っていた」
「えっ?」

ライトニングはちらりとフリオニールを一瞥し、それから数歩足を進める。
フリオニールに背中を向けたまま、小さな声で…フリオニールだけに届く程度の声で言葉を繋ぐ。

「生まれた世界が違うことも、ここに来るまでに戦っていた理由も何もかもが違う。それは分かっていたつもりだったが、分かっていてもどんどん私の知らないお前の姿が見えてきて本当に飽きない」

楽器を使うのが魔法に似ているだとかそんな、自分からは意外としか取れない言葉が聴けることもそう。
こうして真面目な顔で―自分たちからすれば御伽噺にしか出てこなさそうな種々の武器の手入れをしている姿を見ることが出来るのもそう。
ただ武器の手入れをしているだけなのにこんなに楽しそうな表情を見せることがあるのだと分かるのもそう―

「…褒められてるのかな、それ。でもそうじゃないとしてもなんか嬉しい」
「褒めているに決まってるだろう」

振り返ったライトニングはついてこいというようにフリオニールを一瞥してからまた歩き始めた。
それに頷いてフリオニールも歩き始める…自然と並んで歩き始めると、ライトニングが先ほどの話の続きをはじめるように口を開いた。

「お前を見ていると思うんだ、私は随分とフリオニールのことを知った気になっていたけれどまだまだ知らないことも沢山あるんだな、と」
「それは俺だってそうだよ、ライトには俺の知らない何かがまだまだある気がしてる」
「…ああ、だから」

背の高いフリオニールを見上げる格好でライトニングはそちらに笑顔を向ける。その瞳が今映しているのはただ、フリオニールの姿だけ。
フリオニールは自然とそのライトニングを見つめ返していた。ふたつの視線はこうやってときに向かい合い、お互いへの想いを確かめ合う。

「これからも側にいさせてほしい…もっともっと色んなフリオニールを知りたいんだ」
「改めて頼まれるようなことだと思ってない。言っただろ、嫌だって言っても離さないって」
「ああ…そうだった」

笑みをかわし合ったふたりはそのままゆっくりと人のいない辺りへと足を向ける。
今はなんとなく、ふたりきりでいたい気分だったから―

さて、ふたりきりになったら今度は何を話そうか。
もっともっと自分の知らない何かを聞きたくてしかたがない。
そんなことを考えながら、ふたりは足取りも軽くただただ歩いていくのであった。


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