いつも通りのその中で-1/3-






他の仲間達がひずみの解放に向かっている間、待っている仲間達は野営の準備だけを済ませて思い思いの自由時間を過ごす。
アイテムの整理をしているものもいれば魔法書を読んでいる者もいる。かと思えばなにやら即興でルールを決めてゲームに興じている者たちもいる。
ふと見ればティファが折れた丸太を相手に技の練習をしていたりそれをクラウドがぼんやりと背後から眺めていたり、なかなかに皆自由な時間を過ごしているようだった。
そして、その日のフリオニールは刃物を研いだり盾を磨いたりと、持ち歩いている武具の手入れに勤しんでいた…
野営地の片隅で胡坐をかき、ひとつひとつの武器を手にとってはその様子を確認しているフリオニールの背後から、いつものようにライトニングが声をかける。

「それだけ多いとメンテナンスも大変だな」

ライトニングがそう言いたくなるのも無理はない、フリオニールは普段は身につけている武器を全て外して地面に並べていたのだから―改めてみると、武器が6つに盾が並んでいるところはなかなかに壮観である。
丁度短剣を磨き終え、刃の様子を確認していたフリオニールはその声に顔を上げ、そこにあった見慣れた顔に相好を崩す。

「まぁ、こればかりはまめにやらないといけないしな。使いたいときに刃こぼれしていて役に立たないんじゃ仕方ないし」

ライトニングから視線を外すと短剣を他の武器と並べるように置き、ついで斧を手に取ったフリオニールは光にかざしながらその刃の様子を観察している。
当たり前のようにその隣に座ったライトニングはふと思い立ったように置いてあった槍を手に取った。

「…意外と重いな」
「そうみたいだな。俺はずっと使ってるからそんな意識はなかったけどこの前カインにも驚かれた…まぁ、カインの槍は空中で使うことも考えて軽く作ってあるらしいけど」

角度を変え、視点を変えて斧をためつすがめつしていたフリオニールではあるがライトニングの言葉には真面目に答えて、磨き石を手に取ると斧の刃を研ぎはじめる。
ライトニングは一旦槍を置くと、興味深そうにフリオニールが並べたままの武器を見ている―やがて気になったのか、置きっ放しになっていた杖を手に取った。
その杖を握り締めたり振ってみたりしていたライトニングだったが、ふと気付いたように先端に嵌められた石を指で軽く弾く。

「…この部分の石に魔法を増幅する力が籠もっているようだな」
「ああ。お陰で魔法が苦手な俺でもある程度は効果的に魔法が使えてる」

ライトニングから見えるフリオニールの横顔には薄く苦笑いが浮かんでいる。確かに、フリオニールはあまり魔法は得意ではないと自分でも言っている…

「しかし、魔法が苦手とは言えその苦手な魔法を戦いの中に織り交ぜていけるのは大したものだと思うが」
「でも俺、実際稲妻の魔法をライトの前で使うの恥ずかしいんだけどな。君から見たら子供の遊びみたいなものだろう」

ある程度刃を研ぎ終えて、今度は柄に巻いた革の様子を確かめるようにフリオニールはしっかりと斧の柄を握り、ライトニングに当たらないように軽く振ったり構えたりしている。
何か違和感を感じたのか一度首をひねり、そして今度は左手で斧を持って同じように振ってみる…違和感の正体に気付いたのかフリオニールは斧を一旦置くと巻いてある革を解き始めた。

「やっぱり。だいぶ緩んでたな」

革を解き終え、擦り切れた部分などがないかを確認するように斧の代わりにその革を広げて様子を見ているフリオニールの横顔をライトニングはじっと見つめている。
武器のメンテナンスと言うのは大概面倒なものではあるのだが、今のフリオニールはとても楽しそうに見える。
柄の革を巻きなおし始めたフリオニールには笑顔すら浮かんでいて―フリオニールが楽しそうだからだろうか、いつの間にかフリオニールを見つめているライトニングの表情も釣られたかのように楽しげなものに変わっていた。


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