終焉のその先で-1/3-






何故自分たちが再びこの世界に呼び集められたのか。
それを知るために彼らは世界に点在するひずみを解放する旅をしていた。
自分たちがこの世界に再び呼び集められた理由やこの世界に何が起こっているのかを知るための手がかりとして、何か欠片でもいいから残されてはいないかとそれを探してひずみを旅する。それが、彼らの日常。
そしてまた、その日も。

「…しかし奇妙なものだな、カオスに与していた者とこうして手を携えることになるとは」

ウォーリアオブライトはセシルの隣…カインの背後に控えるように立っているゴルベーザをちらりと見遣る。
確かにセシルは言っていた、兄は混沌の神に召喚されはしたものの心の内に光を宿しているのだと。
しかしながらこうして共に戦うことになるというのもなんだか奇妙な気分になるというのも無理はないだろう。
しかし今、神々の戦いの最中にはない。自分たちは敵対しているわけではなく…混沌の神に与していた者たちが元々調和の神に仕えていた戦士たちと共に戦う姿が見られるようになった。
そもそも、混沌の神に仕えていた者たちも今は好き勝手に世界を闊歩している。そこに神の陣営など関係なく、利害が一致すれば彼らに手を貸す事もある。
先日は危機に陥っていたクジャを手助けしてジタンが共に戦っていたりもしたし、「あそこにいるイミテーションにボクちんのお気に入りのタイツ破かれたからぶっ壊したい」と言うよく分からない理由でケフカがよりによってヴァンに手を貸す姿が見られたこともあった。
そして、ゴルベーザもまた。

「…私にも光が微笑んだ、と言うことだろうな」

ゴルベーザの声音はどこか穏やかで、セシルはそれに笑顔を向け…カインも小さく笑みを浮かべた。
セシルもカインも元の世界の記憶を相当取り戻している。その笑顔の裏にはきっと色々と乗り越えた歴史があったのだろうな、と彼らは一様に思った。
そして、そんな中セシルが一歩ゴルベーザから離れる。

「じゃあ、皆…兄さんをよろしくね」

今日、ひずみに挑むのはカインとオニオンナイト、バッツにライトニング…それに、ゴルベーザ。
ゴルベーザ以外の4人の目を順番に見て、セシルは穏やかに微笑む。
セシルも同行するのかと思われたが、それよりは兄を仲間たちに委ねその帰りを待つことに決めたようだった。

「まあ、カインが一緒だから大丈夫だと思うけどね」
「僕達のことももうちょっと信頼してほしいなあ」

オニオンナイトがそんなことを言って笑いながら一歩ひずみに足を向ける。
くすくすと笑いながらその背中を見守っていたティナが不意に小さく言葉を発した。

「大丈夫。無事に帰ってくるって、私が信じてるから」
「そうだよね。僕は無事に帰ってきて…これからもティナを守らなきゃ」

いつもの生意気な笑顔からは想像もつかない真面目な表情のオニオンナイトを見ていた者たちの表情は驚きとともに笑顔に彩られている。

「で、ライトに何も言わなくていいんスか?」

ニヤニヤしながらティーダがフリオニールの肩を叩きそう耳打ちする。
言われたフリオニールのほうはあまりに唐突なその言葉に驚きすら浮かべていて。

「な、何言い出すんだよティーダ」
「ああ、そうそう。私は何があっても無事に帰ってくるから心配するな」

フリオニールがティーダにそう言い返したのと、ライトニングがそう言ったのが全くの同時…だった。
ライトニングの言葉を聞いたティーダは一瞬あっけに取られた表情を浮かべるが、すぐにまたニヤニヤ笑いがその顔に張り付く。
その笑顔の裏の言いたいことに気付いたフリオニールはとぼけるようにティーダからは視線を外し、そのままその視線はライトニングの方へ。

「ああ…待ってるから」
「あーあーもう、これじゃ誰もおれのこと待ってないみたいで寂しいなー」

先ほどのティーダのそれとよく似たニヤニヤ笑いを浮かべながらバッツがそんなことを嘯く。
勿論それは冗談だというのは皆分かった上で、同じように冗談めかして仲間たちが笑う。

「バッツがいないとそれはそれで寂しいから早く帰ってこいよな」
「それはそれでってなんだよヴァン。そんな言い方されたらおれ拗ねちゃうぞ」

どこまで冗談だか本気だか分からない会話を交わしながら、ひずみに向かう5人はそちらに足を向ける。
その背中を見送る仲間達…5人の姿が消えて、仲間達は三々五々と野営の準備に向かう。
そしてフリオニールとセシル、それにティナの3人は一緒に仲間たちのもとへと戻っていた。

「あの子ならきっと大丈夫。あの子は…強いから」
「ああ。それにライトだっているし」
「兄さんとカインもついてるんだから平気だよ。でも、こんな話してるってバッツが知ったらまた拗ねちゃうぞとか言い出すかな」

セシルの言葉に3人は一様に笑いを堪えきれず小さく吹き出した。


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