星に願いを-3/3-






「私はお前のそう言うところに惹かれているんだから…成長するのは喜ばしいがその純粋さを失われては困る」

バンダナの上からフリオニールの頭を撫でたライトニングはそれだけ言って再び星空へと視線を戻した。
そして、フリオニールも同じように…空を見上げたふたりの瞳にほぼ同時に映るのは、先ほどとはまた違う星が輝き、そして流れていく姿が見える―
その瞬間にフリオニールもライトニングも、一様に何かを思うようにその流星の姿を瞳で追っていた。
…流星が消えた後、ふたりは申し合わせたかのように互いの顔を見合わせる。

「…今のは?見えたか?」
「ああ」

会話は短いながらも、それぞれの表情にはどこか高揚したような色が見て取れる。
そしてフリオニールの表情には嬉しさが弾け、ライトニングのそれには穏やかな微笑が―一緒に流れ星を見ることが出来たのが嬉しかった、どんな言葉よりもお互いのその表情がそれを物語っている。
そのまま、ライトニングはフリオニールの目を真っ直ぐに見つめる。先ほどとはまた違った、真剣な眼差しで。

「なあ、フリオニール」
「ん?」
「あの星に…お前は何を願った?」

真っ直ぐなその問いかけにフリオニールは少し答えを逡巡するように沈黙し…そして、ライトニングの瞳を真っ直ぐ見つめ返すとはっきりと答えた。

「…ライトが元の世界に還るその日まで消えてしまわないように、って」

先ほどの話をしていた時に…力を分け与え、願いを抱えながら消えていく流れ星のことを思い出したときに、フリオニールは思っていたのだった。
かつての戦いで、自分たちに力を残す為に消滅を選んだライトニングの姿と流れ星が重なる―と。
だからその流れ星に願いをかけた。ライトニングが同じように消えてしまわないように―
また笑われるかな、とも思ったが予想に反して、ライトニングが浮かべた表情はどこか幸せそうにも見えるもので…

「さしずめ、流星に私の姿を重ねてしまったと言うところか」
「…そうもあっさり見抜かれるとなんだか恥ずかしいな。と言うかライト…君は?」

視線を外し照れ隠しのように質問を返したフリオニールに対して、ライトニングは何も躊躇うこともなく真っ直ぐに言葉を放つ。
それは丁度、先ほど流星が流れた軌跡と同じように真っ直ぐに―

「私とお前を含めて、誰かを守る為に消えなければならない選択をしなければならない人間が現れないように…と言ったところか」

ライトニングの瞳は真っ直ぐにフリオニールを捕らえたまま動かない。
そして、先ほどフリオニールが躊躇った結果やめてしまったのを知らないかのごとくに、当たり前のようにフリオニールの手を握る。

「あっさり見抜けたのは私も同じだったからだ。さっきのお前の話を聞いて、あの時の自分達がなんだかあの流星に重なって…な」
「…そういうことか…」
「あの時はあれしか方法がなかった、だが…『消滅が前提』なんて選択肢しかない状況に追い込まれることがなければ、そもそもそれで消えていく人間も残された人間も無駄な心の傷を抱える必要はないだろう」

ライトニングはそのまま繋いだ手を引き寄せ、フリオニールの手の甲に唇を落とす。
そして真っ直ぐにフリオニールの瞳を見つめて、繋いだほうと反対側の手をその背中に回した。

「この戦いを終わらせる為に何が必要なのかは分からない。だが…私はもう二度と、お前を置いて消えたりしない」

ライトニングのその言葉を聞いて、フリオニールは嬉しそうに顔をほころばせてひとつ大きく頷いた。
そして再びゆっくりと顔が近づき、唇が重なる―

ふたりは気付いていなかった。
そのふたりの願いを聞き届けたように、一際輝く流星が流れ落ちていったことに―


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