星に願いを-2/3-






「丁度あの辺からこう、すーっと流れていったんだ…そうか、ライトは見逃しちゃったか」

すーっと、と言う言葉と共に、流星が描いた軌跡をなぞるようにフリオニールが指を動かす。ライトニングの視線はごくごく当たり前のようにフリオニールのその指の動きを追っていた。

「すぐに教えられたらよかったのかもしれないけど、願い事する方に夢中になってたから」
「流れ星に願い事、か。そう言えばそんな話があったな」

元々生まれ出た世界が違うので、フリオニールとライトニングの間には共有できない話題も少なくない。
チョコボのひなを愛玩動物として飼っている者がいたような気がする、なんて話をライトニングから聞いて野生のチョコボしか知らないフリオニールが驚いたなんてこともついこの間あったばかりだ。
だから、実はフリオニールは言ってしまった後で…もしもライトニングが今の自分の言ったことが分からなければどうしようと少しだけ躊躇ったのは事実。
しかしながら、ライトニングが「流れ星に願い事をかける」と言う習慣を知っていたことで安心したようにひとつ息を吐いた。
そして、ふたり揃って再び空へと視線を移す…星をその瞳に映しながら、フリオニールはふと思いついたように隣にいるライトニングに尋ねた。

「ライトはさ、なんで流れ星に願うとその願いが叶うか聞いたことあるか?」
「いや…?」

フリオニールと同じように、星空を瞳に映したままライトニングは短く答える。
その答えに対して、一瞬だけ静寂がその場を支配し…そして、その支配を破るのはフリオニールの声。その声は何かを思い出すような、どこか懐かしむようなそんな声で―

「流れ星は、消えるまでの一瞬の間に自分に願いをかけた人に力を分け与えながら消えて行くんだって」

その話を聞いたのは誰にだったのか、いつだったのか。なんとなくしか残っていない、幼かった頃の記憶…ところどころ元いた世界の記憶が曖昧になっていることを差し引いても、どうしても思い出せないけれど。
それでも何故か今この話をライトニングに聞かせたくて、一生懸命記憶の糸を辿る。あの時聞いたのはどんな話だったか…

「そのために一際強く燃え上がる、その瞬間の輝きに皆が願いをかける―その願い事を背負って、流れ星は燃え尽きていくんだ、って」

いつの間にかライトニングの視線が星空から自分の横顔に移っている事にも気付かないままフリオニールは一生懸命そう話している―笑い声が聞こえて我に返り、視線を落としたフリオニールが見たのはくすくすと笑うライトニング。

「…子供っぽいって思ってるだろ」

そう言った声が自分でも拗ねているように聞こえて―当然、言われた方のライトニングも同じことを考えたのだろう。ライトニングは笑顔のままそんなフリオニールをじっと見つめている。

「正直に言えば…少し、な」
「悪かったな、子供っぽくて」

ぽつりとそう言ってライトニングから視線を逸らしたフリオニールだったが、ライトニングの掌が自分の頬に触れたのに気付いて視線をそちらに戻す。
相変わらず真っ直ぐ自分を見つめているライトニングの瞳、その目に映るのはフリオニールと…その背後に輝く星たちで。そこからフリオニールは目が離せない…

「馬鹿にしたつもりはない…子供っぽいというのは裏を返せば純粋で素直だと言うことだからな、それはお前のいいところだろう」
「…そう言ってくれるなら…まあ、子供っぽいっていうのも悪いわけじゃないかな…」

上手いこと言いくるめられたような気がしなくもない、だが少なくともライトニングの発言にそこまで裏を疑ってかかるのも失礼な話だろう。
そんなことを考えながらフリオニールはライトニングに微笑を返し…その微笑に触発されたかのようにライトニングの唇がフリオニールのそれと重なった。
反射的に目を閉じて、フリオニールはその口付けを受け容れた―既に慣れているとは言え、やはりその柔らかな感覚はどこかくすぐったく甘く…
唇が離れてもなお、そこに流れる甘い空気は色を変える事はなく。


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