星に願いを-1/3-






「私を連れてきたかったというのはここか」

空を見上げながらライトニングはぽつりと呟く。
そのライトニングの横顔を見つめながら、フリオニールはひとつこくりと頷いた。

以前、バッツから聞いたことがあった―ウォーリアオブライトがひとり星を見上げていると言うこの場所を、フリオニールは一度ひとりで訪れたことがあった。
その時にこの星空を見上げ、そして思ったのだった―ライトニングにこの星空を見せたい、と。
空には星が輝き、それとは別に大きな…クリスタルかとも思える何かが浮かび上がる空間。
幻想的、と言葉にすれば簡単だが、光と闇の織り成すある種芸術的でさえあるその光景を初めて見たときにはフリオニールはただただ圧倒されたものだった。
そしてそれをライトニングと共有したいと…自然とそう思っていた。
この場所をよくひとりで訪れていると言うウォーリアオブライトに、ライトニングのことは伏せて―何せ彼はフリオニールとライトニングの関係に気付いていない―話してみた時に、入り浸らないのならば好きにすればいいとは言われていた。
彼にとっては大切な思い出が詰まっている場所らしくそれならば彼の邪魔をすることはフリオニールにとっても本意ではないと思ったので、こうして―ウォーリアオブライトが何やら忙しく立ち回っている間の時間を見計らってこうしてライトニングを連れてきたのであった。
この世界の空は基本的にはうっすらと雲がかかり、空を見上げて美しいと思えることはとても少ない。
しかし場所によっては澄んだ青空やこんな風に美しい星空を望める場所もあると言うことは彼自身よく知ってはいたが、こうしてライトニングと2人で一緒に見たいと思える程の光景には巡り合ったことがなかった…そんな気さえしながら。

「綺麗な星空だなーと思って、ライトにどうしても見せたくてさ」

正直な考えを短い言葉にして伝えると、ライトニングは星空からフリオニールの横顔に視線を移して柔らかく微笑んだ。
そしてそのまま、ライトニングはその場に腰を下ろす。フリオニールもごくごく自然にその隣に座り込んでいた。
ふたりの視線はただ、空へと送られている―真っ暗な空に白く輝く星たちを見つめている…
時にその視線が空から外されたかと思うと、自らの傍らで星を見上げる愛する人の横顔を視線に映して…そしてまた、星空へと視線を移す。
自然と言葉少なになるのはきっと、その星達に圧倒されているから…

「綺麗だな」

ライトニングの口から出てきたのはそんな短い言葉…フリオニールはただそれに頷き、丁度自分の傍らに置かれたライトニングの手に手を重ねようとして…思いとどまったようにその手を引っ込めた。
今のライトニングは自分が初めてこの星空を見ていたときと同様に、この光景に心を奪われていることだろう。
それならば彼女が充分にこの風景を堪能するまでは、自分が余計なことをするべきではない…そう思ったのがひとつと、単純にこの場で手を握ると言う行動があまりにも陳腐に思えたのがもうひとつ。
それに触れ合っていなくても、今間違いなく同じことを思う2人の心はしっかりと寄り添っている…そう確信できていたのがもうひとつ…
ぼんやりと考えていたフリオニールの視界に、きらりと小さい星が映り…その星は、長い尾を引いてゆっくりと流れ始める。

「…あっ」

小さくそう声を立てたフリオニールに気付いたのか、ライトニングもフリオニールと同じ方向に視線を送る―ライトニングがそちらを見たときには既に流星は流れ落ちた後だったのだろうか、その視線はすぐにフリオニールの横顔へと移る。
ライトニングが自分の方を見ているのに気付いたのか、フリオニールもすぐに視線をそちらへと移した。

「…流れ星…見えたか?」
「いや、私には見えなかったな」
「そ、か」

少しだけ残念そうにそう呟くと、フリオニールは空を―丁度先ほど彼が流星を見たあたりを指差す。ライトニングの視線は自然と、フリオニールの指差す先へ。


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