ただ君を包み込む、-3/4-






「…確か私はひずみで…そうか、私は負けたのか」

自分の置かれている状況を悟ったのか、ライトニングは小さくそう呟く。
フリオニールはそれに対して小さく頷きを返し、そしてライトニングの手を握る力を強くする。

「大丈夫か?まだどこか痛んだりはしないか?」
「いや、痛みはないな」
「そうか…よかった」

ライトニングの答えにもうひとつ安心したかのように息を吐く。

「心配しすぎだ、お前は」

苦笑いを浮かべながらライトニングは身体を起こす…その身体を覆っていたマントがそれで剥がれ、ライトニングの身体が再びフリオニールの目の前で露わになる…
フリオニールは握っていたライトニングの手を離し、慌てて背中を向ける。

「どうした、フリオニール」
「ライト!服!服!!」

フリオニールの声に、ライトニングは首をひねりながら自分の身体を見る…そこでようやく、自分の衣服の状態に気がついたようだった。
そして、フリオニールの背中に向けてひとつ苦笑いを向ける。

「何を慌てているのかと思ったら…裸だって見たことがあるのにこの程度で慌てる必要がどこにある?大体ティファの普段着もそんなに変わらないだろう」
「それとこれと、ついでにティファはまた話が違うって言うか…!!とりあえず、着替え!そこに…ティナが、さっき持ってきた!」

何故こんな片言なのか、それはフリオニールにもよく分からない。
しかし、そのフリオニールの様子が余程おかしかったのかライトニングはくすくすと笑いを零した。

「だから、どうしてそんなに慌てているんだお前は。今更この程度、なんでもないだろう」
「…だってほら…今はポーション使ったから治ってるけど、ライトは怪我してたし、その…普段見てるときとはまた違うって言うか…」

説明しながらフリオニールの声は段々と小さくなってゆく。
フリオニールの中には、いつもと違う…傷ついたライトニングに対して一瞬でも欲情めいた感情を抱いてしまったことへの罪悪感があって。
それをライトニングが全く気にしていない様子なのが余計に申し訳なさを増す…その結果、どうしてもはっきりと喋ることが出来なくなっていて―

「…まあ、着替えなければこのテントを出ることさえ出来なさそうな状況だからな…マントで隠してくれていたのはその気遣いもあるのだろう?」
「ああ…他の奴にあんな姿のライトを見られたくなかった」

背中を向けたままぽつり呟いたその言葉にライトニングが微笑んだことには、フリオニールは気付かない。
ただ…ありがとう、と言う言葉がその耳に届き、それから静かに衣擦れの音が聞こえる。
どうやらライトニングが着替えを始めたらしい…ライトニングのことは心配だが余計に振り返れない状況で、フリオニールが視線を送れる先はテントの幕しかなくて。

「別に私はお前になら見られても気にしないが」
「…今振り返っちゃうと変な気を起こしそうで怖いんだ」

口調は冗談っぽくも聞こえるだろうが、冗談でもなんでもないとフリオニールは自覚している。
ただ、ぼんやりとどこを見るでもなく視線を彷徨わせながら背後から聞こえる衣擦れに耳を傾けるだけ。

「しかし随分派手にやられてしまったようだ。これはもう捨てないといけないな」
「あ、当たり前だろ。まだ着るなんて言ったら流石に俺が止めるよ」

相当慌てた声を出してしまったことがフリオニール自身にも分かる。それがおかしかったのか、背後のライトニングはまた小さくくすくすと笑い声を立てた…
そして笑い声に混じって聞こえる、ジッパーが上がる音。既にインナーは着終えたということだろうと判断してそこでフリオニールはようやく振り返った。


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