ただ君を包み込む、-2/4-






そしてライトニングの身体を横たえると、その隣に膝をついて座った。
そしてライトニングの身体を包んでいたマントを一度外してから手にしたポーションをその身体に振りかけてゆく。
癒しの雫がその肌を滑り、触れたところから少しずつその傷が薄らいでゆく―やがて痛々しい紅の色は消え、フリオニールにとっては見慣れたものであるライトニングの素肌が取り戻されてゆく。
完全に傷がふさがりきってはいないものの、一見すればもう傷痕があることにも気付かない程度には綺麗に傷も治りつつある。
荒かった呼吸も次第に落ち着き、まるで寝息を立てているかのごとき穏やかさに変わる―後は彼女が目を覚ますまで待てばそれでいい。
しかしポーションには破れた衣服を修復する力までは流石にないわけで…傷が癒されたことによって、素肌が露わになったライトニングの状態は「痛々しい」ものから全く違う印象を与える姿に変わる…
そのライトニングの姿にフリオニールは思わず唾を飲む…そして、一瞬頭に浮かんだ考えを振り払うようにぶんぶんと頭を大きく横に振り、再びライトニングの身体を自分のマントで包んだ。

「何考えてるんだ、俺」

自分に対して戒めるようにそう呟き、ライトニングの傍らに胡坐をかいた。
なんとなく気まずくて、ライトニングの方を見ることが出来ない…それでもやはりライトニングのことは心配なわけで、マントに包まれた身体ではなく…傷の痛みから解放されたからか穏やかな表情に変わったその顔をじっと見つめる。
いくら傷が治ったとは言え、体力は相当消耗しているだろう。目を覚ますにはもう少し時間がかかるかもしれない…

「フリオニール。ライトの着替え、ここに置いておくね」

テントの入り口から聞こえた声に、フリオニールは短くありがとうと答える…テントの入り口からその答えを聞いたティナはそのままテントを出て行きかけて…しかし、すぐにまたテントの中に顔だけを出した体勢をとる。

「ライト、大丈夫そう?」
「ああ、もう傷はだいぶ治ってるし呼吸も落ち着いてる…今は殆ど消耗した体力を取り戻す為に眠ってるような感じだ」
「…じゃあ、ライトが目を覚ますまでは側にいてあげてね」

フリオニールに後を任せるようにそう言って、ティナは今度こそテントを出て行った。
そう言えば、ライトニングがここで眠っていると言うことはこのテントは今夜は女性たちが使うと言うことになるのだろうか。
そう考えると、自分がいつまでもここにいていいのかどうかとフリオニールの中にほんの少しの躊躇いが浮かぶ。
しかし今…このテントを使うことになるティナ自身からライトニングの側にいてあげてほしいと頼まれてしまったのだから離れるわけにもいかず…
あれこれと考えているフリオニールの視界の中でライトニングが身じろぎし、その身体を包むマントが剥がれる。
肩口から胸の辺りまで露わになった素肌に慌てたようにフリオニールはライトニングの身体にマントをかけなおし…それから、その手をしっかりと握り締めた。
眠っているとは言えその手は確かなぬくもりを持っていて、先ほどの傷ついた状態のライトニングを見ているフリオニールにとってはそれがひとつの安心材料となる。
あとは彼女が目を覚ますのを待てばそれでいい…

どれくらいの時間そうしていただろうか。
ライトニングの眉がぴくりと動き、その瞼がゆっくりと開かれる…

「…フリオニール…?」

開かれた時はどこか虚ろだった空色の瞳は、フリオニールの姿を映していつもの色を取り戻す。
フリオニールはライトニングが既にいつものライトニングであることを確認して、安心したように息を吐いた。


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