強く繋ぐ糸-4/4-






「お前は何か勘違いしているようだがな、フリオニール」

その真っ直ぐな言葉を受け止めたライトニングは…視線を逸らしている彼の分まで真っ直ぐにフリオニールを見つめる。
その言葉が真っ直ぐに自分の心を射抜いたのと同じくらい真っ直ぐな視線…視線を逸らしたままの彼はきっとそれに気付いていない、だろうが。

「自分だけがそんな風に思っていると思ったら大間違いだ。私だって…お前が戦うのならその支えでありたいと思っている。それに」

逸らされたままの視線を気にすることなく、ライトニングはそこで小さく息を継ぐ。そして。

「私を縛り付けていると言うのならそんなことで心配するな。私は望んでお前の側に縛り付けられているんだから」
「…ライト…」

そこでフリオニールの視線はようやくライトニングの元へ戻ってくる―ふたつの真っ直ぐな視線が互いを捉えあう。

「後ろから随分と気障で陳腐な台詞が聞こえてくるんだけど」
「気にするな、いつものことだ」

呆れたようなクジャの声にカインが苦笑い交じりに返し、そこでライトニングとフリオニールは今の会話が聞かれていたことに気がついて気まずそうに視線を逸らしあうのであった。
そんなやり取りの後に前方から聞こえてくる足音…そちらに視線を送ったライトニングの目に映るのは…もう何度も目にしてきた、フリオニールに良く似た「誰か」…
何の迷いもなくライトニングは一歩足を進めた。
今、「彼」と戦わなければならないのは彼女自身…そしてフリオニールだと、何故か当たり前のようにそう思えて。

「…戦えるのか、ライト」

スコールの短いその一言が案じているものが何なのかははっきりと分かっている。
だが、そんなことは関係ない―今のライトニングははっきりとそう言い切れた。

「当たり前だ…私は負けるつもりはない。行くぞ、フリオニール」
「ああ…任せておいてくれ」

ぶつかり合う視線が…仲間としての信頼と互いへ注がれる愛が1本の糸の様に縒り合わされ、決して解けることのない「絆」となってふたりをしっかりと繋ぐ。
それを確かめてフリオニールから外された視線は、自分との間合いを計る「フリオニール」へと移る…

「―斬り込む、だけだ」

ライトニングがそう口にしたのと、その剣を抜き放ち間合いを詰めたのがほぼ同時。
そのライトニングの瞳に一切の躊躇いはない―

―私がいなくてもフリオニールは戦える。私だってフリオニールがいなくたって戦うことは出来る、だが…

時に斬りかかられ魔法をぶつけられ、それと同じくらい自分も剣を見舞い魔法と銃弾を叩き込む。
振り回される槍に足を取られそうになりながらも間一髪でかわし、反撃の代わりに雷を見舞う―それをかわし切られ炎がライトニングを襲うがそれすらも宙に身を躍らせて避け、今度は氷の魔法を放つ―
どのくらいの時間そうして戦っていただろうか。
互いに相当消耗している。次に攻撃を食らわせた方が勝つ―それほどまでに、互いに追い詰められた戦いの中。
「フリオニール」から自分に向かって投げられた短剣を跳び上がってかわし、身を翻すとその背中に銃弾を撃ち込む。
銃での攻撃なので実際に手応えを感じることはないが、それでも目で見る限りは確かな一撃を与えたと確信したライトニングはそのまま体勢を変えて「フリオニール」に突撃する。
そのまま剣を大きく振りその身体をしっかりと捕らえ、そして剣を振りかぶり頭上から一気に地面に向かって叩き伏せるように切りつける。

「フリオニール!」

この機を逃すわけには行かない。それに…これに乗じれば、勝てる。ライトニングはそう確信していた。
呼び声に答えてそこに現れるのは目の前にいるのとは…姿はよく似ていても全く別人である、ライトニングにとっては唯一無二の…全てを預けられる存在。

「加勢しよう!」

現れたフリオニールは何の迷いもなく足元に差した短剣を抜く。いみじくも先ほど、「フリオニール」がライトニングにそうしたようにその短剣を真っ直ぐに投げる…。
それを見計らい、ライトニングは剣を構える。一瞬間を置き、フリオニールが自分の元に引き寄せた「フリオニール」を殴り飛ばしたのを確認するとすぐに攻撃の構えを取る―

「どこを見ている?」

両手に剣を構え、「フリオニール」に向けて突撃する…ライトニングが感じるのは確かな勝利の手応え。
相応に傷ついてはいたが、歩いていればこの傷は癒されるだろう。
ちらりと、傍らに立つフリオニールを見遣る。
ライトニングの受けた傷を心配そうに見つつ、それでも勝利を収めたことの充足感がその表情には満ち溢れていて。

「…ありがとう、フリオニール」
「言っただろ?ライトの強さをもっと引き出せる存在でありたい、って」

かわし合った微笑みが、ふたりを繋ぐ「絆」を強くする。
真っ直ぐに繋ぎ合わされた1本の糸が確かにそこには存在しているように感じていて―それが何より心地よく、そして心強い―

「付き合っていられないね、まったく」

呆れたようなクジャの一言で再びライトニングとフリオニールは我に返り、そして気まずそうな視線をぶつけ合うのだった。

「とりあえず、先へ進むぞ。他の仲間とも合流できるかもしれない」

カインの言葉に皆頷きあい、そして更に迷宮の奥深くを目指す…
フリオニールだけではない、そこにいる仲間たちとそして…この迷宮のどこかで自分たちを探しているはずの仲間達との絆も確かに存在する事を確かめながら。


「…あまり強がるな」

スコールがクジャに向けたその言葉の意味は…きっと、ライトニングが知る必要はないのだろう―


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