強く繋ぐ糸-3/4-






その後も、仲間達やかつての敵とよく似た「誰か」との戦いを重ねていく…
その中にはやはりフリオニールによく似た「誰か」の姿もあって、その度にライトニングの中に芽生えた違和感がその心を引っかく。
一体何なのだろう、考えれば考えるほど答えは出ない…
もう何人の「フリオニール」を斬り捨てたか自分でも分からなくなりかけていたところで、曲がり角の向こうからライトニングの耳には数人分の足音が聞こえてくる。
パーティを組んでいる敵でも現れたのだろうかとライトニングは身を固くする、が…曲がり角から現れた人影はライトニングの姿を見るやこちらに駆け寄ってきた。

「ライトか?…本物…のようだな」

そう言ってこっちを見据えるスコール…その問いかけに込められた意味からも、そしてその表情からも目の前のスコールは本物であると見て取れる。

「そんなことを聞くということはそっちも本物みたいだな」

ライトニングの答えにスコールはひとつ頷く―表情は変わらないが、彼なりに安心しているのだろうかその身を包む気配が変わる。
そして、その会話を確かめたように曲がり角の向こうから姿を現したのは…オニオンナイトとカイン、それにクジャ。

「ライト、無事だった?」
「どうにかな…それにしても随分珍しい組み合わせだな」

姿を現した3人を順番に見て、最後に視線が止まったクジャを一瞥してから視線をスコールに戻す。

「僕は別に君たちに協力する意図があるわけじゃない。だけど…前にこの迷宮でジタンに助けられたからね。借りは返さなきゃいけないからジタンを見つけるまでの間一緒に行動してるだけさ」
「…素直じゃないな」

カインの苦笑い交じりの呟き…そしてそれにあわせるようにオニオンナイトが一言付け加える。

「でもさ、一番素直なはずの誰かさんが随分素直じゃない行動に出てるみたいだけど」
「そう言えば…」

その言葉に、スコールが今やってきた曲がり角の方を振り返る。
ライトニングも釣られてそちらに視線を移す…本人は隠れているつもりなのかもしれないが、背中に背負った槍がはっきりとライトニングの目に映った。

「…フリオニール…だな」
「うん、フリオニールだよ?ずーっとライトのこと探してたのに、いざ会えたとなるとアレだからねえ」

くすくすと笑ってみせるオニオンナイトは曲がり角の向こうへと走って戻ってゆく。
そして、そこにいるらしきフリオニールと何事か言葉を交わすとその手を引っ張ってライトニングの側へ戻ってきた。
オニオンナイトの力で引っ張って素直に出てくる程度なのだから本人も本気で隠れるつもりはなかったのかもしれない…そんなことを思いながらライトニングはフリオニールを一瞥する。

「…あ、えーと…」
「一体何をやっているんだ」
「ああ、うん…まあその」

どうにも歯切れの悪いその言葉だが、もしかしたら他の仲間…それに加えて今日はクジャまでいるわけで、その前では言いづらいのかもしれない。
ライトニングはひとつ頷いてみせ、それからその肩をぽんと叩いた。

「話は後から聞く。ここからは私も一緒に行こう」
「ああ。じゃあ、フリオニールはライトニングをアシストしてくれ」
「あ、ああ」

カインの発言に短くフリオニールがそう答えたのを確かめると一行は迷宮の更に奥へと足を進めるのであった。
途中、やはり仲間たちによく似た「誰か」を討ち倒し、宝を集めていく。一体どこまでの深みに到達すれば良いのかそれすらわからないままに。

「…ところで。ジタンは今本当にこの迷宮の中にいるんだね?」
「それは間違いないが…なかなか見つからないな」
「僕は借りを作らない主義なんだ、早くジタンを見つけて借りを返さないと…そのために君たちと一緒に行動しているだけだからね」
「その台詞はもう10回くらい聞いたぞ」

列の戦闘ではスコールがオニオンナイトのアシストを受けて戦っている。
その後ろで成されていたクジャとカインのそんな会話を聞くともなく聞きながらライトニングは自分の一歩後ろを歩くフリオニールに歩調を合わせる―

「で、何であんなやる気のない隠れ方をしていたんだ」
「…いや、まぁ…情けない話だからあんまりライトにはしたくないんだけど」

フリオニールの視線は迷宮の天井の方を彷徨い、それからすぐにライトニングの方へと戻ってくる。

「…皆と合流するまでの間、ひとりで戦ってたとき…ライトによく似た奴と剣を交えることがあった」
「ああ、私もそれは同じだが…それがどうしたんだ」
「その、偽物のライトが…まあその、あまりにも普通に戦ってるもんだからなんて言うか…ああ、ライトは俺がいなくても戦えるくらい強かったんだなってふと思い出して…それで」

一旦言葉を止めて、フリオニールの視線はまたも迷宮の天井へ。

「そう考えたらさ、俺はライトを縛り付けてるんじゃないかって思ったりしてたんだ。そんなところでライトが出てきたからなんか気まずくて」
「…ああ、なるほどな」

その言葉はフリオニールに対しての返事のようでいて…実際はライトニングの心の奥に向けられていたもの。
感じていた違和感の正体は今フリオニールが言葉にしたものと同じ―
フリオニールの「強さ」を目の当たりにしたから、フリオニールと共に戦うのは自分でなくてもいいのではないかと思ってしまっていた。
それでもフリオニールの側にいたいという想いとの鬩ぎ合いが生み出していた感情…分かってみればなんということはない。

「でも俺はライトと一緒にいたいしライトと共に戦いたい。俺がいなくたってライトが充分強いのは知ってるけど、それでもライトの強さをもっと俺が引き出せるようになりたいって…誰よりライトに相応しいパートナーでありたいって思ってる」

視線は未だ天井の方に向けたままだが…それでもその言葉は真っ直ぐにライトニングの心を射抜く。…それは丁度、彼が戦いの時に放つ矢のように。
違うのは、放たれたのは傷つける為ではなく…ライトニングの心を捉えるために放たれたものであるということ。


←Prev  Next→





SHORT STORY MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -