温泉へ行こう!-1/5-






グルグ旧火山帯の中に、温泉地帯があるのだという。
最初に見つけ出したのは確かティナだということだった。

「それでね、この近くで野営してるときはたまに女の子4人で入りに行ったり…」
「僕も行ったことあるよ」

オニオンナイトの一言に数人が驚いたようにそちらを見る。

「お前皆知らない間に何してんだマセガキ」
「…ティナに場所教えてもらってひとりで温泉に入っただけだけど?何想像したのラグナ」

オニオンナイトの眼差しは冷たくラグナを射抜く…言い返されたほうのラグナは自分の早とちりが恥ずかしかったのか、ふいと目を逸らしてみせた。
それと同時に、恐らくラグナと同じ事を想像したであろう数人が同様にそちらから視線を逸らす。

「最初に見つけたところはそんなに広いところじゃなかったからあんまり教えないようにしてたんだけど、そのすぐ近くに他にももっと広い温泉があるのを見つけたの。だから、皆で行こうって言いたくて」

ティナの一言に、その話を黙って聞いていたウォーリアオブライトはふむ、とひとつ頷く。

「しかし、いくら広いとは言え皆でと言うのは私は賛成しかねるな。男女混浴と言うのは風紀上良くないだろう」
「えー、オレは混浴大歓…げ…」

言いかけたところでジタンの動きと言葉が止まり、その視線は自分の斜め前あたりに立っていたバッツの方へ。

「なあバッツ…首筋と背中と頭の両側に刃物突きつけられてる気がするんだけどオレ今どうなってる?怖くて身体動かせねえ」
「ネギ坊主が正面から首筋に剣当ててて、頭の右側はティーダ、左側はフリオニールが剣突きつけてる。背中のはクラウドが」
「この状況で冷静な解説ありがとう…って言うか冗談に決まってるだろ、そんな怒るなよ…」

ジタンの言葉に刃を引いた4人ではあったがその表情は4人が4人とも笑っていない。
その状況にウォーリアオブライトはひとつ咳払いをし、全員そこで一旦落ち着いたように静寂が走る―そこでティナが再び口を開いた。

「うん、そうなんだけどね。ふたつ温泉が並んでて、丁度仕切るみたいに岩場になってるところを見つけたんだ。ここなら、片方に私たちが入って男の人たちはもう片方に入ればいいかなぁと思って」
「ふむ…それなら、着替えの際だけ気をつければまだ問題は起こりにくいかもしれないな」

ティナの説明に答えたウォーリアオブライトは腕を組み少し思案してみせたが、すぐに大きく頷いた。

「それでは準備をして30分後に出発としよう。ティナ、道案内を頼んでいいだろうか」
「うんっ」

嬉しそうなティナの頷きをぼんやりと見ていたオニオンナイトであったが…すぐに仲間達に目配せをし、そしてこっちへ来いというように指を動かす。
それで集められたのは…フリオニール、クラウド、そしてティーダ。
4人は真面目な顔をつき合わせる…考えていることはとりあえず全員同じ、のようだった。
小声で口火を切ったのは、3人を呼び寄せた張本人であるオニオンナイト。

「…とりあえず…覗きとかやりそうなのって誰がいる?」
「一番危険なのはジタンかな。バッツとかラグナはひとりだったらやらなさそうだけど主犯がいる状態なら『面白そうだから』って理由でやらかす可能性はある」

フリオニールの一言に4人はこくりと頷きあう。この辺の認識は4人とも共通のようだった。
そう、この4人が集まった目的はたったひとつ…愛する人をいかにして覗きの魔の手から守るかに尽きる。

「セシルとスコールは安全だと思うっスよ。元の世界に好きな人がいて、それ以外の女の子に興味ないっぽいし。ジタンもそのはずなんだけどアイツは『それはそれ、これはこれ』ってタイプっスからね」
「カインも好んでそんなことをするところが想像つかないな…あああと、風紀が乱れるとか真顔で言い出すあいつも」

ティーダとクラウドが付け加え、そして4人は再び頷きあう。
更にそこに言葉を重ねていくオニオンナイト。

「あと僕ね、ヴァンは変な意味じゃなくて悪気なく女湯見ちゃいそうな感じがしなくもないと思うんだよね」
「悪気があろうがなかろうが見せる訳にはいかないだろう」

クラウドがオニオンナイトの言葉にそう返し、そして頷きあうティーダとフリオニール。
そんな2人をちらりと見遣って、オニオンナイトはひとつ息を吐く。

「まぁ、僕個人の見解としてはフリオニールも危険人物側だったんだけど」
「あのな、俺を何だと思って…」
「けどフリオニール、ライトの入浴シーン見られるの嫌っスよね?」

不機嫌そうに眉根を寄せたフリオニールに、ティーダがそう問いかける…フリオニールはその言葉に視線をティーダの側に移し、大きく頷いてみせた。

「そんなの、当たり前だろ」
「ほら、今のフリオニールは大丈夫っスよ」
「うん、それは僕にも分かってる。そう言う意味ではライトに感謝しないと…で、総括としては」

自分で逸らした話題を何事もなかったかのように元に戻しながらオニオンナイトは指を立てる。

「行動パターンはある程度読めてるし、ヴァンは僕に任せて。あとはジタンを抑えておけばバッツとラグナは大丈夫だと思うんだけど」
「じゃあ、ジタンは俺とクラウドがなんとかしよう。ティーダは念のためにバッツとラグナの様子を見ておいてくれ」

そして4人は再び頷きあう…自分たちが守りたいと思っているそれぞれの愛する者達が、

「あの4人、あんな仲良かったっけ?」
「フリオニールとティーダがよく一緒に行動していたと言うのは知っているが…」
「あ、でもあの子とクラウドもたまに一緒に行動してたりするよ」
「じゃあ、意外と仲良しなのかもしれませんね」

等と呑気に話し合っていたことは全く知らないままに。


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