体温と自尊心-3/3-






もしかしたらユウナの言うとおり、ライトニングに限らず…自分より体格が大きかろうが重かろうが、怪我をしていればこのくらいのことをするのは当然だと思うのが女性なのかもしれない。
しかしフリオニールにはやはりどうもその辺がよく分からない…とでも言おうか。

「…怪我をしたのがお前でなかったら私だってここまではやっていない。だが怪我をしたのはお前で、その怪我の責任は私にある」
「ライトだけのせいじゃないだろ、油断していた俺も悪いわけだし」
「それでもお前の為に自分が出来ること位させてくれないか…こんな時くらいはお前に甘えられたいんだ」

そして一度体勢を立て直すとしっかりとフリオニールの太股の辺りを支えるように背負いなおす。
甘えられたい、とまで言われてしまってはもうフリオニールに反論はできない…と言うより寧ろそれが嬉しかったりするから自分でも困ると言うか。
ひとつ溜め息をついて、ライトニングの背中に素直に身体を預ける…
落ちないようにとライトニングの肩に回した腕からそのぬくもりが感じられて、そうなってくると恥ずかしがっていた自分が妙に滑稽に思えてくる。

「…お前は」

一歩また一歩と脚を進めるライトニングが小さな声でぽつりと呟く。

「ん?」
「…あったかいな」
「急にどうした?」

ライトニングの発言が妙に唐突なものに思えて、フリオニールは思わずそう問い返していた。

「なんとなくそう思っただけだ。このぬくもりが側にある限り私には恐れるものは何もないのかもしれないと」
「…俺、今怪我してるけど」
「だが私がもしも同じように怪我をしたら…多分、一番側にいてくれるのはフリオニール…だろう?」

いつもそう、ライトニングはこうして…それが当たり前であるかのようにフリオニールの心を無意識に縛り付ける。
気付いていないのだろうか。彼女が望むことなら命を懸けてでも応じたいと自分が思っていること…
そんな自分にそんなことを言えば自分が彼女を手放せないと思ってしまうことに、気付いていないのだろうか。

「私は自分がして欲しいことを同じようにお前にしているだけだ」
「…俺、凄く愛されてるな」

嬉しくて、照れくさくて…ようやく言葉になったのはそんなありきたりな言葉で。

「なんだ、気付いてなかったのか」
「そんな訳ないだろ。でも今改めてそう思った」

そしてぬくもりを確かめるように再びしっかりとライトニングの身体に回した腕の力を強くする…
自分が男だからとかそう言う意地も何も関係なく、今はただライトニングに愛されていると言う現実を確かめたくて。

「ライトはさっきさ、俺がいたら恐れるものは何もないのかもしれないって言ったけど…」
「ああ」
「俺もそう思う。ライトがいてくれるんなら怖いものなんてないって」
「…そう、か」

短くそう答えたライトニングの答えにどこか照れているような響きが含まれているように聞こえてフリオニールは不意に嬉しくなり…そのまま目を閉じた。
そうすることによってライトニングがそうであるように自分もまたライトニングのぬくもりを何よりも求めていることを確かめて…そしてそれが側にあることをはっきりと悟って、フリオニールはただただ幸せを噛み締めるのだった。


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