体温と自尊心-1/3-






…まぁ、普通に考えればこの状況がおかしいということはフリオニールにも分かる。
だがしかし、この状況が逆に「仕方のない話」なのもまた事実。
そもそも、油断していたのは確かなのだ。

あるひずみに仲間たちが向かい、フリオニールはそのアシストとして同行することになった。
そしてひずみの中で自分たちに襲い掛かったイミテーションを迎撃したのはライトニング。
明らかに自分やライトニングよりも格下と思われるイミテーションが相手で、その動きを甘く見ていたのは確かだったのだ。
まさかそのライトニングの加勢に入った時に足首を狙われ、結果…恐らく捻挫程度だとは思うが歩くのに少々困難が伴う状況に陥るとは思っていなかった。
また間の悪いことにポーションを切らしており、仲間たちのもとに戻るまではこの傷は簡単には癒せない。
これは不運が重なったことだからいいとしてその後のこの状況が…

「な、なあライト…別にラグナなりクラウドなりに任せてくれていいんだぞ?重いだろ」
「しかし、お前が歩けなくなったのは半分私の責任だからな」

その表情は見えないが、声色からいつもの真面目腐った顔なのはなんとなく想像がつく。
そりゃあ、自分が怪我をしたのはライトニングの助太刀に入ったからなのだからライトニングの性格を考えたらそこで彼女が責任を感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。
だが、だからと言ってこの状況はどうなんだろうか…
ライトニングの背におぶさった状態でフリオニールはそんなことをぼんやりと考えていた。
確かにライトニングは女性にしては力もあるし、体格だっていい。
しかし自分はそのライトニングよりも背が高いしそもそも軽いものとは言え鎧を身に纏っている。
自身が怪我をしていてフリオニールを背負うほどの余裕が残されていなさそうなスコールや、明らかにフリオニールを背負うことは出来なさそうなユウナに頼むと言う選択肢はまあないとしても…
ラグナは殆ど怪我をしていないし、クラウドは無傷なのだ。この2人のどちらかに頼んだ方が余程いいのではないかとフリオニールは考えている。

「でも、ほら…重いだろ」

先ほども同じ事を言ったがそれに対して気にしていないような答えを返しているのでこの問いかけが無駄なことはフリオニールにもよく分かっていた、がそれにしてもやはり気を使うものではある。
それに、男としてなんとなくこの状況がカッコ悪いような気もしていたし。
現に、先ほどラグナには盛大に笑われてしまったし、クラウドは笑いたいのに笑えないようななんとも微妙な顔になっていたし。
スコールは黙ってはいるもののずっと何か言いたそうにしているし、ユウナはひたすらライトニングの心配をしている。

「だから気にしていないと言っているだろう。それにお前が歩けなくなったのは私の責任だから」

さっきは半分と言っていたのにライトニングはいつの間にか全部自分で責任を引っかぶるつもりになったようだ。
別にフリオニールはライトニングが悪いなんてことは欠片も思っていないのに。そもそも、自分が相手を甘く見ていたのが原因だったのに。
やはり色々なことが気になって素直におぶさっているのもなんとなく気が咎める、と言うのが今のフリオニールの本音。

「でもさライト、やっぱり…」
「じゃあ聞くがもし私が歩けなくなったらお前は私を置いていくつもりか?」
「いや、そりゃ確かに俺もライトをおんぶして連れて帰るくらいの事はするけど」
「ならば問題は何もないだろう」

きっぱりと言い切られて一瞬納得しかける…が、やはりどう考えてもこの状況はおかしい。
単純に立場を逆にすればいいというものでもないわけで。なんせライトニングは女だし、身に纏っているものも軽装で明らかに自分より遥かに軽いのだから。
と言うより今何故自分が納得しかけたのか、フリオニールには逆にそちらの方が不思議だったりもして。

「いや、そう言う問題じゃなくて」
「とにかくお前は今は黙って私に連れて帰られたらそれでいいんだ」

そしてライトニングはまた黙々と歩き始める。フリオニールを背負ったまま。
…こう見えてライトニングは意外と頑固だ。自分を背負って連れて帰ると決めた以上その意思を曲げることがあるとは考えられない…それはずっとライトニングと一緒にいるからこそ分かる彼女の「性格」。


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