心の靄を晴らすのは-3/4-






「まあその、ティーダがライトに話したことは事実だったということは否定できないんだけどその上で聞いて欲しい…言い訳になっちゃうかもしれないけど」

普段、話しづらいことを話すときは視線を外すことすらあるのに今日のフリオニールは真っ直ぐにライトニングの目を見据えている。
その真剣な眼差しを拒否することなどライトニングに出来るわけがなくて、ライトニングは大きく首肯する。
そしてライトニングが頷いたのを確かめるかのようにフリオニールは言葉を並べ始めた。

「まあ先にカッコ悪い部分から話しておくと、その…興味がなかったわけじゃない。ライトも知ってる通り、俺…そう言う経験がなかったから、その段階では」
「そこは否定しないのか」
「まあ、その…俺も男だからな、その辺は」

言い訳になると言うのでそこは真っ先に否定するのかと思いきやあっさりと認めてしまったが故に逆にライトニングの方は拍子抜けしてしまう。
しかし、さっきジタンが「気持ちは分からないわけじゃないからノーコメント」と言っていたところを見ると、男としては意外と当たり前な感情なのかもしれない…残念ながらライトニングは男ではないのでその辺はよく分からないが。
フリオニールはそのライトニングの様子も見た上でこくりとひとつ頷きを返した。

「ただその段階で、俺には特別な関係にあった『誰か』がいたわけじゃない。そんな人がいれば、興味があるって理由だけで誘いに乗ったりできない。俺の言いたいこと…分かるかな」
「つまり今なら大丈夫だと言いたいんだな―私がいるから」
「そう言うこと」

ライトニングが理解を示したことが嬉しかったのかフリオニールは小さく笑みを浮かべ、そして話を続ける。

「で、ここからはちょっと言い訳っぽくなっちゃうかもしれないから聞きたくないって言うんなら止めてくれていい」
「いや、そこまで込みで全て聞かせてもらいたいな」

ライトニングが何の躊躇いもなくそう答えて、フリオニールの側はそれを予想していたとでも言うように言葉をつなげていく。

「そもそも、王女は俺たちにとっては取り戻すべき祖国の象徴みたいな人だった…その言葉に逆らうって選択肢がまず俺の中になかった」
「…あいつにとってのコスモスのようなもの、か」

先ほど瞼の裏に浮かんだウォーリアオブライトの姿が、フリオニールの言葉で再び思い出される。
既にこの世界にはいないというのに未だにその影を胸に抱き、彼女が集め残した戦士たちを今でも守ろうとしている―その感情は時に愛にも似ていると、ライトニングは思っていた。
だとすれば。
その時フリオニールが誘いに乗りかけた裏には…愛はなかったのかもしれないが、その場の空気によって愛との境界線が曖昧になってしまった尊敬の念があったのだとすれば…一概に責めきれるものでもないのかもしれない。


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