心の靄を晴らすのは-2/4-






そのままライトニングが足を向けたのは海の近く。ライトニングは岩場に腰掛け、海をぼんやりと見つめていた。
元の世界のことは気にしても仕方がない。それは分かっている。
だが、何故だろう。今ティーダから聞いた話がライトニングの気分に雨雲のように重く圧し掛かる。
この「重さ」の正体がライトニングには分からない。ただなんだか気分がもやもやする…
ティーダから聞いた「偽王女様」とやらがどんな顔なのかも全く分からないのに、先刻ティーダから聞いた話の内容があっさりと想像できてしまうのがまた良くない。
あっさりと想像できてしまうのはひとえにフリオニールがそう言う時にどういう反応を示すか、どう言う表情を見せるかを自分が全部知っているからで…
別に過去のことなど気にならないつもりでいたのにその事実が妙に…重い。
…そもそも、ティーダの言葉の断片から想像できる状況が自分の知っているフリオニールと繋がらない。
回数を重ねることで少しは慣れたとは言え未だに自分に対して積極的に手を出すのに躊躇っていることさえあるフリオニールが、別に恋愛関係にあったわけではない王女とやらの誘いに乗ったというのが繋がらない―

「引っかかっているのは…それ、か」

自分でなんとなく答えめいたものが見えて、ライトニングはひとつ息を吐いた。
別にフリオニールに元の世界でどんな過去があっても気にするつもりはないが…頭ではそれが分かっているのに、心がそれに納得していない、とでも言うのだろうか。
自分の知らないフリオニールの一面を見たような気がしたから、そしてその一面は素直に「そこまで込みで愛している」と言えるような内容でないこともあってそこが引っかかっていて―
しかし答えが見えたところでこの心の重さ、胸のつかえが取れるというわけでもなくただぼんやりと海を眺めている…どのくらいの時間そうしていたか、ライトニングにもはっきりとは分からない。

「…ライト…こんなとこにいたのか」

少し息が上がっているその声…
そんなことを思いながら首を動かし声のした方を見る。そこに立っているのは、いつものフリオニール。
砂浜の方から、岩場で海を見つめていたライトニングをじっと見ている…恐らくひずみを抜けてきたところだろうに、自分を探しに来たと言うのだろうか。
随分走ったらしい、肩で大きく呼吸をしている。少し息が上がっているのはそのせいだろう。

「ちょっと考え事をしていた」

何のためらいもなくそう言ってのけるとライトニングはそんなフリオニールに向けて手招きをしてみせる。
それに素直に従ったフリオニールは岩場によじ登り、そしてライトニングの隣に腰掛けた。

「…その様子だとひずみでは特に何もなかったようだな」

隣にやってきたフリオニールを一瞥し、特に大きな怪我もしていなさそうだと確認するとライトニングは隣に座ったフリオニールの手にそっと手を重ねる。
フリオニールは手の向きを変え、そのライトニングの手を緩く握り返した。

「ああ、あの人がなんだか張り切ってて…殆どあの人しか戦ってないから」

なんだか張り切っている、と言うウォーリアオブライトの姿が目に浮かんで、ライトニングは小さく笑いながら…握り返してきたフリオニールの手を更に強く握り返す。

「いや、俺そんな話をするためにライトを探してたんじゃないんだ…その、ティーダがなんか余計なこと言った…んだよ、な?」

その話を聞いたから慌てて自分を探しに来たと言うところだろうか…気まずそうなその表情を見ているとなんだか申し訳ないような気分になってくる。
しかし、一度聞いてしまった以上自分の中にかかった靄をこのままにしておくことは出来そうになくて―

「まあ、余計なことではあるな。お陰でどうにも気分が晴れない」
「…そうなるだろうからライトにはあの話はしたくなかったんだけど…ティーダのヤツ」

はぁ、とフリオニールはひとつ息を吐いて、真面目な顔でライトニングを見つめる―その視線を真っ直ぐに見つめ返す。フリオニールの言葉を待つように。


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