同じ夢-2/3-






気にしていて欲しかったわけでもないが、全く気にされないというのも流石に寂しいもので…そんな勝手な考えは頭から追い出し、フリオニールは一度目を閉じた。その時のことを、思い出すように。

「あの時、俺には夢があった…のばらの咲く世界。戦いのない、人々が花を見て心から笑っていられるような世界を作りたいって夢が。その夢の為に戦っていた」
「…戦いのない世界、か。それもお前らしいな」

ライトニングは相変わらずフリオニールの胸に頭を預け、その話に聞き入っている。
その表情は見えない。だが、ライトニングの声から彼女が今少しは安らいでいてくれることは感じる…それが分からないほどフリオニールだって鈍いわけではない。
今彼女の耳に届いているのは自分の声と鼓動くらいのものだろうか。そんなことをふと思いながらライトニングの髪に指を絡め、フリオニールは言葉を繋いで行く。

「今にして思えばその夢の先にライトの姿を見ていたのかもしれないなんて思ったりはするけど」

そこでライトニングは顔を上げた。その表情には決して薄くはない驚きの色が浮かんでいる。

「私のことは忘れていたんじゃないのか?」
「だけど、君を基にしたイミテーションがいるだろう?あいつを見たときに…どこか懐かしくてさ。敵だって分かってるのに嫌な感じはしなくって」

その時のことを思い出しながらフリオニールは目を閉じる。
舞い散る花びらが印象的だった、でもその先に何かが見えていたような…そんな気がして。
ライトニングの髪と同じ薄紅色の、命があるように見えない人形。自分にとって敵の筈の「彼女」―戦うことを躊躇ったことはないが、それでも「彼女」を見ていて何故か懐かしい気持ちになったのは事実。

「だから俺は忘れていたとは言え、心の奥底にライトの存在を残してたんだと思う…君としていた約束のことも。だから…世界を花で満たしたかったのかなって。あの時守れなかった約束を、覚えてないまでも果たさなきゃいけないって思ってたから」
「…お前の枷になるのは嫌だからできれば完全に忘れていて欲しかった…と言いたいところだが、そう言われると正直悪い気はしないな」

悪い気はしない、なんて言葉ではあるもののライトニングの声はどこか明るい。
それが少しだけ嬉しくなって、フリオニールはライトニングを一度しっかりと抱き寄せた。
抱き寄せた身体は暖かくて―あの時とは違う、今しっかりと腕の中にいる愛しい存在を確かめながらフリオニールの言葉は続く。

「で、それを踏まえたうえで聞いて欲しいんだけど、今の…俺の夢」
「…ああ」
「もう一度この世界に花を咲かせたいんだ」

この話をしたら彼女は笑うだろうか、などとフリオニールはふと考えた。
あの時と同じように、どう考えても子供じみた夢。でも、それでも…やっぱり、今のフリオニールにはどうしてもかなえたい夢―
この夢を見始めたのはいつだったか、と少しだけ考え…考えるまでもなく答えはひとつだと気付く。

「あの時…神々の戦いが終わった時に甦った世界には沢山の花が咲いていた。それを覚えていたから…こうしてまたライトと巡り合ったから、それが新しい夢になった」
「私と巡り合ったから…?」
「ライトに見せたいんだ。この世界に花が咲き誇る所を。この世界が平和を取り戻した姿を…君だけじゃない、あの時一緒にいられなかった仲間たちにも」

抱き寄せた身体を離し、ライトニングの目を真っ直ぐに見つめた。
子供っぽいと言われればそうかもしれない。だが、あの時自分が覚えた感動をライトニングとどうしても共有したいと…フリオニールはそう考えるようになっていた。


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