同じ夢-1/3-






戦いが続く世界の中。
神々に仕え戦うわけではない。何故今自分たちがこの世界にいるのかすらも分からないまま戦い続ける日々。
まだ、憎しみを向けたり救いたいと願ったり、共に歩みたいと思ったりすることが出来た混沌の軍勢と戦うのであればその想いが心の糧となることもあったが今はそれすらなく、彼らの敵となるのはただイミテーションのみ。
時折、その戦いの運命がどうしても辛くなることがある。何かに救いを求め、縋りたいと思うことがある―
自分にもそんな弱さが眠っているのだと、誰もが不意に気付かされる時がある…


その夜はいつものように野営地を抜け出し、仲間達の居場所から少し離れた廃墟でフリオニールはライトニングと2人で夜を過ごしていた。
その身体は既に繋がりあってこそいないものの、互いの存在を確かめ合うように2人はしっかりと抱きしめあっている。
…熱く火照った身体を冷ますかのように吹く夜風がどこかくすぐったく、フリオニールは静かに目を閉じる…

「なあ、フリオニール」

その時、腕の中のライトニングが小さく声を立てた。
閉じかけた目を開き、フリオニールは視線だけをライトニングの方へと送る。

「…ん?」
「私たちは…どこへ向かっているんだろうな」

フリオニールの胸に手を当てたまま、ライトニングは小さな声で呟く。
その声音はいつもの彼女とはどこか程遠いほど弱く儚く感じられて…フリオニールは不意に、ライトニングの薄紅色の髪に手を添え、ゆるゆると撫でた。
いつもなら迷っているのは自分の方で、ライトニングは寧ろその手を引いたり背中を押したりしてくれるはずなのに…その彼女から突然放たれた気弱な言葉にフリオニールは驚きを隠せない。

「どこへ向かっている…か」
「先の戦いで標となった神はもういない。それでも私たちは戦い続けている…お前は、この戦いの先に何があると思う?」
「そこまで考えてたら多分俺は戦えなくなってしまうから考えないようにしてる、ってのが正直なところかな」

フリオニールだって、考えたことが全くないわけではない。この戦いの意味、自分たちが戦う理由を。
神々のいない世界。敵として襲いくるイミテーションたち。だがその戦いの向こうに何があるというのだろうか。
だが、いくら考えても答えは出なかった…だから一旦考えるのをやめてしまった。

「お前らしい」

ライトニングの声にはかすかに笑みが含まれている。それは決して馬鹿にするような類のものではなく…どちらかと言えばそう、その答えを聞いて安心したような…
それで少しフリオニールの心も安らいだのか、ライトニングの髪を撫でる手は止めることなく―言葉を紡ぐ。

「この世界は一度…俺たちが還る前に甦ったはずなんだ。でも今また大地は荒れ果てて、この世界に住まうものは誰もいない。そりゃ、戦う意味を考えてたら虚しくもなるさ」
「…じゃあ、お前はどうしてそれでも戦えるんだ?」
「それを話し始めると、前の戦いの時の話をしなきゃいけない…俺が君の事を忘れていた時の。それでも構わないか?」

実を言えば、フリオニールはあまりその時の話をライトニングにはしたくなかったのだ。
自分がライトニングを忘れていたことを、当のライトニングにはっきりと伝えなければならないから。
それがライトニングを傷つけてしまうのではないかと、フリオニールは思っていたから。
だがライトニングは自分の胸に頭を預けたまま首を横に振った。

「構わない…寧ろ、私の存在に囚われてお前が戦えなかったなんて話だったら聞くのは断ったかもしれないが」

…自分が気にしているほどライトニングはその事実を…13回目の戦いの時に自分がライトニングを忘れていたことを気にはしていない様子で、フリオニールは安心したような観念したような…自分でもなんとも言いがたい感情を抱えながらひとつ息を吐いた。


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