左手の約束-2/3-






「指輪?」

買い物を終えて仲間の待つ野営地に戻り、買ってきたものを色々分配してからフリオニールはライトニングを探して呼び止めて…今日買ってきた指輪を手渡した。

「ああ、仲間を呼ぶ力を時々残すことが出来る指輪らしい。これがあったら、君が危険な時に俺が君の手助けがしやすくなるみたいなんだ」

別にライトニングの手助けをするのが常にフリオニールと言うわけではない。しかし、ライトニングと一緒に行動していることの多いフリオニールがその役目を担うことが多かったのもまた事実で。
つまり、この指輪をライトニングが身につけることで一番大きな影響を受けるのはライトニングに加勢する為に呼ばれることの多いフリオニールと言うことになる。

「俺、結構悔しい思いをしてることもあったからさ。君が大変な時に何も出来なくて。それで…」
「ああ、ありがとう…しかしお前は苦労症なのか?私が毎度毎度お前を呼び出していたらお前だって疲れるだろうに」

冗談めかしてそう言いながら、ライトニングはフリオニールが差し出した指輪を受け取って右手の薬指に通した。
ライトニングの指にぴったりと納まったその指輪がランタンの明かりを浴びて鈍く光る。

「まあどうせ、他の仲間が貸せと言って来たら貸すつもりではいるが…お前が側についてくれている時は絶対この指輪をつけて戦うことにする」
「そうしてくれると買ってきた甲斐があったってもんだ」

フリオニールの表情には自然と笑顔が浮かび、ライトニングの右手に輝くその指輪とライトニングの表情を交互に見て幸せそうに微笑んだ。
ただ、ライトニングが何か物思うような表情だったことが気にならなくはなかったが…しかし、それでも素直に感謝の気持ちを口に出すライトニングにそれ以上の追求をするのは躊躇われて、結局敢えてそのライトニングの表情の理由を尋ねることはしなかった。

そして、翌日。
ウォーリアオブライトに指名されてひずみの解放に加わり、幸い怪我人の1人も出さずに戻ってきたフリオニール達を仲間達が出迎える。
ひずみの中には宝箱があり、武具や昨日の店で使える交換材料などをいくつか持ち帰ってきてそれを品定めしているところでフリオニールの肩が叩かれる。

「ん?ああ…ライトか。どうした?」
「フリオニール、手を出せ…ああ、左手を」

ライトニングに言われるまま、フリオニールは左手をライトニングに向かって差し出す。
その手を何の迷いもなく取ったライトニングは、フリオニールの左手の薬指に1本の指輪を通した。

「あれ、これ…」

フリオニールはすぐに気がついた。それは昨日、自分がライトニングの為に買ってきた指輪と同じものであるということに。
すぐにライトニングの手に目をやる…昨日彼女が自分で通した右手の薬指にその指輪はなかったが、しかし今はフリオニールと同じ左手の薬指に今自分に嵌められたのとまったく同じ指輪が輝いている。

「もうひとつ買ってきたんだ。…お前を手助けできなくて悔しい思いをしていたのは私も一緒、だからな」

その言葉にフリオニールは思い当たる…昨日、ライトニングが何かを思うような表情だったことに。
もしかしてあの時ライトニングが考えていたことは…

「ありがとう、俺もこれ大事にするよ。でもさライト…君はなんでつける指を変えたんだ?」
「お前の右手の薬指はもう埋まっているだろう。そして私が昨日もらったこれだが、薬指以外には入りそうにない」

ライトニングは当たり前のようにフリオニールの右手を指差す。確かに、元の世界から持ってきた指輪がそこには輝いていて…これがまた、結構大振りなデザインなのでこの指に新しく指輪をつけるのはどう考えても現実的ではない。
…つまり、自分と同じ指につけたかったがフリオニールの右手の薬指にはつけられないので左手の薬指…と、そう言うことなのだろう。

「…ライト、案外可愛いところがあるんだな」
「案外は余計だ」

ふいと目を逸らしたライトニングだったが、その後すぐにフリオニールの方を見据えて、それからはっきりとした言葉を繋ぎ始める。


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