愛の食卓-3/3-






フリオニール以外は時間がかかったがどうにか食事を終え、皆野営地で思い思いに楽しんでいる。カードゲームに興じるものやティーダのボールを使って遊ぶもの、仲良さそうに語らっているものなどもいる…
その中、ライトニングはフリオニールの姿を探していた。
他の誰に何を言われても気にしないが、やはりフリオニールの反応は気になるもので。
そして、ようやっとフリオニールの姿をみつける…大き目の木にもたれかかりながらきょろきょろと周囲を見回していたが、ライトニングの姿を見つけると嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄ってきた。

「ああ、ライト。丁度探してたんだ」

そう言うとフリオニールは足早に歩き始める…探していた相手から探してたと言われるというのがこんなに嬉しいことなんだな、などとライトニングは考えながらフリオニールの後に続く。
そして先ほどまでフリオニールがもたれかかっていた木の陰あたりにやってくると、フリオニールは言葉をどう切り出していいのかと逡巡するように少し視線を彷徨わせ…それから口を開いた。

「あのさ、皆の言うこと…あんまり気にするなよ」

もしかしてフリオニールはそれを言う為に自分を探していたと言うのだろうか。
あの状況でライトニングが傷ついたのではないだろうかと、フリオニールは心配そうな瞳をライトニングに向ける―
ああ、そうだった。先の戦いで自分が惹かれたのは、この…強さと不器用さと優しさを全て持った彼なのだと改めて思い出してライトニングはなんだか嬉しくなって。

「いや、別に他の連中の言っていることを気にしているわけではない…が、お前がどう思ったのかは気になっている」
「ああ、俺はまぁその…ほら、食えるんだったら味に注文つけるつもりはない、かなあ…うん」
「はっきり言ってくれていいんだぞ?自分で食べてまずいと思ったものなんだからまずいと言われて当然だとは思っている」

流石にフリオニールが語尾を濁したのに気付かないほどライトニングも鈍いわけではない。はっきりと言い切ると、フリオニールは申し訳なさそうにライトニングから視線を外しながら小さく呟く。

「正直に言うと…まあ、美味くはなかった…けど」
「…けど?」
「多分焼く時に均一に火が通ってないのと、それと味付けのバランスがさ。塩はもうちょっと多くてもよかったかな、って俺は思った。だからその辺気をつけてれば多分次は大丈夫」

冷静に分析をしたフリオニールの言葉に、ライトニングは驚いたようにその目を見る。

「フリオニールお前…料理、できるのか?」
「元の世界で旅してた時に仲間に叩き込まれたって言うのが正しいけどな。何事も経験だろ、どんな武器だって使い込んでいるうちに正しい使い方が分かってくる。料理も同じだって」

ぽん、とライトニングの肩に手を置いたフリオニールの手…彼がどんな世界で生まれて戦ってきたのか、ライトニングはまだわずかにしか知らない。
だが、フリオニールのその言葉には確かな重みを感じる。
常に沢山の武器を手にしている彼の言葉だからこそ武器に例えると言うのはとても分かりやすくも思える。

「確かに私は―料理をしていた記憶が、殆どないからな」
「次の時は俺も手伝えたら手伝うからさ」

ともすれば無邪気にも見えるその笑顔がライトニングにはとても愛しい。
元の世界の記憶はなく、先の戦いの記憶もところどころ抜け落ちている部分はあるがそれでもはっきりと自分はフリオニールに惹かれていたこと、彼を確かに愛していたことをはっきりと思い出させる―

「頼りにしているぞ」
「ああ、任せとけ」

そう言って笑うフリオニールの笑顔を見ていて、ライトニングは思った。
今どうして自分がこの世界にいるのかは分からないが、それでもこの笑顔が側にあるのならそれも悪くない…と。
自分の為に優しさも強さも全て向けてくれる存在が今の自分にとっては何よりも大切なのかもしれないと…


後日談。
その次の食事当番でライトニングが出した料理は、まだ「美味しい」とまでは行かなかったがそれなりに食べられるものに仕上がっていた。
料理に勤しむライトニングの隣にフリオニールの姿があるのを見て、仲間たちの幾人かはこの2人の「関係」に感づいてしまったのだが…それはまた、別の話。


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