長い夜を越えて-3/3-






抱きしめたいと思ったが、しかし今彼女は…たとえ何も起こらないことが常とは言え「見回り当番」の最中である。その時に限って何かが起こらないとも限らない―。
仕方ないな、と小さく呟いて、フリオニールはライトニングの手を握る力を強くした…が、ライトニングの方からその手は解かれる。
その代わりに解かれた手で頭を引き寄せられ、頬にキスされた―その場所から炎が点るようにフリオニールの顔が熱くなる。

「私を戦いに駆り立てる原動力になってくれている礼だと思えばいい」
「ライトはずるいな、いっつも最終的に自分から行動しちゃうんだから」

苦笑いを浮かべながらも、口付けられた頬に手を当てる…自然と頬が緩むのが止められない。
一方のライトニングは涼しい顔をしてそんなフリオニールを見つめている。ライトニングの表情も、どこか柔らかさすら感じさせるような笑顔で。

「そう思うならお前も自分から動けば良いだけの話だろう?私は別に抵抗もしないし、嫌がったことも一度もないつもりだが」
「…今自分から行動したら多分…色々止まらなくなると思うからやめておく」

返した言葉はあながち冗談や誇張と言うことでもなく…本当ならライトニングを抱きしめたい、寧ろもっと深く繋がりあいたいと心のどこかで思ってしまったのは事実。
だが流石にそれは自制することにして、フリオニールはほんの少し躊躇いながらもライトニングの肩を抱こうと手を伸ばす…

「ライトニング、交代の時間だ」

背後から声がして、ライトニングは振り返りフリオニールは慌てて伸ばした手を引っ込める。
そこにいたのはウォーリアオブライト。なるほど、次の見回り当番と言うことだろう。

「そうか。すまないな、こちらから呼びに行くべきところを」
「ところでフリオニール、君はこんな時間にこんなところで何をしている?今の見回り当番はライトニングのはずだが」
「ああ、いや…眠れなかったからちょっと気分転換にテントを出てきただけだ」

それ以上追求するでもなく、ウォーリアオブライトはそうかと短く答えて歩き始める。
しかし数歩進んだところで振り返り、2人を交互に見た。

「しかし、事情は分かったが夜中に男女が2人と言うのは私は感心しない。他の仲間から誤解を受ける可能性があるので気をつけるんだぞ、2人とも」
「あ、ああ…」

フリオニールの答えに頷いて歩き始めたウォーリアオブライトの背中を、フリオニールとライトニングは何も言えずに眺めている。

「あらぬ誤解も何も、なあ…事実そう言うことなんだけど」

ようやくフリオニールがそんな言葉をひねり出し、それを引き金にしたように2人は笑いを零しあった。
勿論公言したつもりはないが皆とっくに2人の関係を知っている物だと逆に思っていた。それがこんなところに知らない人物が潜んでいたとは…

「さて…本当はもう少し一緒にいたいところだが、あいつに見つかるとうるさそうだからそろそろテントに戻った方がよさそうだな」

ライトニングは名残惜しそうにそう呟くと、女性用のテントのほうに向かって足を進める。
そう言われてフリオニールも自分のテントのほうへ…少し歩いたせいか、今ならば目を閉じれば眠れそうな気がしていた。

「俺も何とか寝られそうだよ。…ありがとう、ライト」
「礼を言われるようなことは何もしていない。ただ一緒にいただけだ」
「さっきも言っただろ?一緒にいてくれることが一番なんだ」

フリオニールの言葉にはああ、と短く返してライトニングはそのままテントのほうへと向かっていく。
そしてフリオニールも、テントに入る…スコールは相変わらず熟睡しているし、クラウドもかすかに寝息を立てている。
ウォーリアオブライトの場所を残すようにして自分の寝場所を確保すると、フリオニールは身体を横たえて目を閉じた。
ライトニングと共にいたことで安らげたのか、今ならばすんなりと眠れそうな気がした―
それと共に。
今日「出来なかったこと」は、近く好機を見つければその分どこかで…などと考えている自分に気付き、そんな自分に苦笑いを向けながらフリオニールは眠りに落ちていった。


←Prev  →





SHORT STORY MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -