長い夜を越えて-2/3-






「で、眠れないって言うのは…昼間湖の近くで寝ていたのが原因か」
「知ってたのか…」
「言っただろう?私はお前が思っている以上にお前のことをよく見てるんだ」

かすかな笑みがライトニングから零れ、フリオニールの口元も自然に緩む―やはりなんだか照れくさくはあるが、自分が一番愛しいと思っている人にそんな風に言ってもらえるのは悪くない。
ぼんやりとそんなことを考えていたフリオニールとそしてライトニングの視界に、丁度テントに戻ろうとするクラウドの姿が目に入った。

「じゃあ、ライトニング。後は任せた」
「ああ。それと…ありがとう、クラウド」

今ライトニングがクラウドに向けた「ありがとう」はきっと、フリオニールを気遣ってくれたことに対してだろう。
もしも自分がライトニングの立場であればやはり「ありがとう」と口にすると思う。自分の愛しい人を気遣ってくれた…その事実だけに対して。

「だから俺は礼を言われるようなことはしていない」

それだけ言い残してテントの方へ向かっていくクラウドの背中を見送ったところで、ライトニングがふと思いついたようにフリオニールの手を取った。
…戦いの中では「片手がふさがる」ことが命取りになることもあるし、それ以前に他の仲間がいるところではこうして手を繋いだりはできない…
だからこそライトニングは今の、この誰もいないと確認できたタイミングでフリオニールの手を取ったのだろう。
フリオニールは…嬉しいようなくすぐったいような不思議な心境になって、ライトニングのその手をそっと握り返した。
繋いだ手から伝わるぬくもりは優しくて、何故かフリオニールに力強い安心感を与えていた。

見回り当番と言っても、基本的に野営地の近くにイミテーションが近づいてきていないか・カオスの軍勢に属していた物が悪意を持って近づいてきてはいないかを見張り、何かあれば戦うなり仲間を呼ぶなりする…ただ、それだけ。
イミテーションはともかく、カオスの軍勢にいた者が近づいてくることも殆どない。
時折ゴルベーザやジェクトと言った、こちら側に血縁者がいる者達が会いに来る程度で警戒するようなこともなく。
…つまり、イミテーションが近づいていたりしなければ野営地の周りを歩き回っているだけになる。

「…静かだなー」

テントの近くあたりを通過する時に流石に声は立てられないので、丁度テントとテントの間あたりを通過する時にフリオニールがそう呟く。

「まあ、いつもこんな物だろう」
「それはそうだけどさ」

繋ぎ合わせたままの手が暖かい。
ライトニングの視線は、周囲を警戒しつつもフリオニールに向けられ時折絡み合う視線に笑顔が浮かぶ。
ふとそのぬくもりが愛しくなって、フリオニールは繋いだ手を持ち上げて口元に引き寄せ、ライトニングの手の甲にそっと口付けた。

「…急になんだ」
「なんか、こう…今ものすごく、ライトが一緒にいてくれることが幸せだなぁって思ったから。そう考えたら、眠れないのも悪くないかな、とか」
「眠れなくなったのは昼寝したからだろう」

フリオニールの言葉に笑みを零しながら、ライトニングは返すように繋がれた手を自分の方に引き寄せてフリオニールの手に口付ける。

「けど、ほんとに思う…ライトがいてくれるから俺は戦えてる気がするし、もっと強くなれてる気がする。今のこの、何のために戦っているのかすら分からない世界で不安に思うこともあるけど、ライトがいるからこそ戦うって選択が出来てるんだって思う」
「…私もそうかもしれないな。フリオニールがいてくれるから、この世界でも自分を保っていられるのかもしれない」

呟かれたその言葉に、フリオニールはライトニングがたまらなく愛しくなって。



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