未来まで繋ぐ鎖-1/4-






もしも。
もしもいつかライトニングがこの世界から元の世界に還ったとして。
そうなればもう自分は隣にはいられない。それはとっくに覚悟は出来ている。永遠が無いことはとっくに分かっているから、避けられない別れの瞬間までは精一杯ライトニングを愛すると決めた。
だがライトニングが元の世界に還ったときに、ライトニングの記憶の中で自分の存在がどんな形で残るのか―時々フリオニールはそんなことを考えることがあった。
側にいられないのならライトニングには自分のことを忘れてもらったほうがいいのかもしれない、だがそうあっさりと自分の存在をなかったことにされたとしたらそれはそれで寂しい気もする―しかし、自分の存在が元の世界でのライトニングの幸せの邪魔をするのだとしたらそんなことも言っていられない。
そんなことを考え、時々フリオニールはひとり眠れない夜を過ごすことがあった。


「…何、今更そんなことで悩んでんの?」

次のひずみを探して移動する合間、たまたま近くにいたオニオンナイトにその話を切り出してみたフリオニールはあまりにもあっさりとそんな答えが返ってきたことになんだか拍子抜けする。
無論、彼と自分は立場が同じ―愛する人と同じ世界に還ることは叶わないことを分かっていて話を切り出したのではあるがそれにしてもあっさりしすぎてやいないだろうか。

「そうは言うけどさ…俺の存在がライトを縛ってしまうことになるんじゃないかとか、考え始めるとキリがないって言うか」
「フリオニールみたいに変に想像力が逞しいタイプはね、余計なことは考えない方がいいの。考え出すといらないことまで想像して余計泥沼にはまっていく一方だから」
「変に想像力が逞しいって何だよ」

自分よりも遥かに年下のオニオンナイトに諭されるようにそんなことを言われてフリオニールは大きく息を吐く。
まあ彼の大人ぶった生意気な態度については別に今に始まった話ではないのだが―きっと、他の仲間がこの会話を聞いていたらどっちが大人だか分かったもんじゃないなんて笑われたことだろう。
たまたま最後尾に並んでいたから他の仲間はこの会話はきっと聴いてはいない、それがフリオニールにとってはある種救いでもあったわけだが。
フリオニールの様子をじっと見ていたオニオンナイトだったが、不意にひとつ呆れたように溜め息をついた。そして、フリオニールからは視線を外してぽつりぽつりと言葉を繋ぎ始める。

「僕だってそんなのとっくに何度も考えた。もしかしたらティナには元の世界に待っている人がいるかもしれないし、それは僕だってそうかもしれない…僕なんて元の世界のことを殆ど覚えてないんだから」
「俺にはそんな人いるのかなぁ。仲間だったら沢山いたんだけど」
「あのね、話の腰を折らないの。僕が真面目にこんな話するの珍しいことくらい分かるでしょ」

咎めるようなオニオンナイトの口調にフリオニールは小さく頭を垂れた。大柄なフリオニールが子供そのもののオニオンナイトに説教されている光景が傍からはどう見えているか―フリオニールとしては想像もしたくないところではある。
しかし、オニオンナイトの言うことは尤も。普段彼はこんな話をすることはない―それは事実だった。
自分に対してライトニングの話を持ちかけては反応を見て面白がっている者は沢山いるが、オニオンナイトにティナの話を持ちかけたところで上手く話を逸らしてしまうものだからからかい甲斐がないと言う者も少なくはなかったし。
すまない、と短く答えたその言葉に満足そうに頷くその表情は歳相応のものにも見えた―話の腰を折られて気分を害していたのだとしたら、オニオンナイトも存外年齢なりの幼さは持ち合わせているのかもしれない、とフリオニールはふと余計なことを考えてみたりもして。


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