惑い、想い-2/4-






「んー、別にそんな変な話をしたつもりはないんだけどなぁ。って言うかオレもう何話したか忘れちゃったよ」

オニオンナイトに剣の稽古をつけていたと言い張っている―がどう見てもちょっかいをかけているようにしか見えない―ヴァンを見つけて話しかけたライトニングではあったが、ヴァンの答えは疑問を解消するようなものにはなり得なくて。
そうか、と短く答えたライトニングに、ヴァンは不思議そうな視線を向ける。

「でもフリオニールの様子がおかしいからってライトに何か関係あるのか?」
「…えーと、ヴァン…それ本気で言ってる?」

横からオニオンナイトが呆れたように口を挟む。
言われたヴァンは何故自分が呆れられているのかなど全く分からないといった様子で首をひねった。

「本気って何が?」
「って言うかもしかしてヴァン…知らないの?」
「知らないって何を?」

オニオンナイトはそこで頭を抱えた。

「ライト、多分ヴァンはこれ以上役に立たないよ。ほんとに色々と知らないっぽい」
「…私が聞きたいのはそれ以前になんでお前が知っているのかと言うことなんだが」

はぁ、とライトニングはひとつ息を吐いた。オニオンナイトに教えたつもりは全くないのだが…情報源はティナだろうか。
言われたオニオンナイトのほうは「さあね」とだけ口にして小さく笑った。
子供のうちに笑って誤魔化す癖をつけるのは良くないと思うぞ…などと内心思いながらライトニングは2人から離れた。

「…で、オレが知らないって何を?」
「うん、ヴァンは知らないままの方がいいと思う。ヴァンのためにもライトのためにも」

…そんな会話を背後に聞きながら。

その後もライトニングは仲間たちに話を聞き込んで回ったのだがどうにも有力な情報は出てこない。
フリオニールと話していたのはジェクト…これはティーダがいないと知るとすぐに帰ったらしいので関係ないとして、あとはヴァンのみと言うことだった。
しかし、そのヴァンがあの調子では情報を引き出せないし、そもそもヴァンとフリオニールが話していたのを目撃していた人間は多数いるものの何を話していたのかまでは誰も知らない。
どう考えてもヴァンとの会話が原因なのだろうが、肝心のヴァンが覚えていないと言うのではどうしようもない。
こうなってくると、方法はもう一つしか残されていない…今のフリオニールの態度を見る限り、かなり難易度が高いであろうことは想像に難くなかったが。


いつものごとく食事を済ませ、いつものごとくそれぞれがその日割り当てられたテントに戻っていく…いつもの、野営地の夜。
そそくさとテントに戻ろうとするフリオニールの腕を、ライトニングは何も言わずにしっかりと掴んだ。

「…ら、ライト」
「話がある。付き合え」

そして答えも聞かずにフリオニールの腕を引いて歩き出そうとする―が、その腕はすぐに普段の彼からは想像もつかないような力で振り払われた。

「ごめん、今は聞きたくない」

拒絶の言葉…今のフリオニールがライトニングに対して心を閉ざしていることの証左に、ライトニングの頭にかあっと血が上る。

「お前が聞きたくなくても私には話があると言っているんだ」
「だから…今は聞きたくないんだ」

ライトニングと視線を合わせようとしないフリオニール。ライトニングの中に苛立ちが募って行く。

「…私が嫌いか?」
「違う…でも、今は」
「違うなら話を聞け」

再度フリオニールの腕を取り、振り払われないようにきつく掴んでからライトニングは歩き始める。

「でも、俺は…」
「お前がどう思おうと今は関係ない。私がお前に話があるんだからお前はその話を聞けばそれで済むんだ」

言ってしまってから、ちょっと今の物言いは冷たすぎたかもしれない―とライトニングの中に小さな罪悪感が生まれる。
しかし、人の話を聞きたくないと拒絶するフリオニールに対してこのくらいの態度は許される、とも感じていた。
フリオニールに拒絶されたことで、自分は少なからず傷ついたのだから―フリオニールだって、少しは傷つけばいい。


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