愛し方の迷い道-4/4-
「寂しいなんて思うことがお前に依存しているようで、そんな自分が嫌になることもあった。だが、お前と話しているとそうではないんだなと思えてきた」
「…うん」
「強くいたいと思うことが既に、自分の中に弱さがあることを認めてしまっている。それなら弱さを受け容れた上で更なる強さを目指す方が建設的だ―そしてお前は、私に自分の弱さと向き合う為のきっかけをくれている」
ライトニングは自然と腕を伸ばし、フリオニールの掌を緩く握っていた。
その手はしっかりと握り返され、その手の熱さがライトニングの心をほぐしていく―強くなければいけないと凝り固まっていた心を柔らかく解いていく。
滑り出す言葉はまだどこかぎこちなくはあったけれど、まとまらない考えは言葉になることでライトニングの中にはっきりとした答えを植えつけていた。
「お前の側にいるともっと強くなりたいと思える。そのために、本当は目を反らしたくなるような自分の弱さとも向き合わなければいけないと思える…つまり」
そこで一度言葉を切ったライトニングは、手をしっかりと握ったままフリオニールの正面に立ちその目を真っ直ぐに見上げた。
フリオニールはもう笑ってはいない。真面目な顔で、ライトニングの話を聞いている―それを確かめてから、ライトニングははっきりとした口調で言い放った。
「私にはお前が必要なんだ。お前を守りたいと願う強さも、お前と離れたくないと思う弱さも全て私には必要なものなんだ」
投げかけられた言葉に、フリオニールは微かな笑みを浮かべる。何処か恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうなその笑みがライトニングの胸をくすぐる。
その微笑みを見て幸せだと感じている自分の存在に気付いて、ライトニングは―自分で言葉にしたことではあるが改めて実感する。自分にはフリオニールが必要なのだと。
「そんなの、俺だって…俺にだって、ライトは絶対に必要な人なんだ。この世界にいる間は、ライトがいないと困る」
「ああ…例えいつか元の世界に還る日が来たとしても、それまではもっと色んなものを、感情も強さも見つけていきたいと思っている…お前と、一緒に」
頷きあい、交し合った視線がはっきりとふたりの絆を示している―出会えたから知ることが出来た強さも弱さも自分にとっては必要なものなのだということを確かめ合うように、視線はやがて微笑みへと変わる。
離れる日が来てもそれまでに見つけたものは消えない、そう信じて…ゆっくりと昇り始めた朝日がふたつの笑顔を静かに照らしていた。
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