魔列車で行こう-4/5-






食堂車にたどり着くと、それぞれがテーブルに分かれてメニューを見ながら好きに料理を注文していく。
確かに他の乗客がいない点が全く気にならないと言えば嘘になる。だが、普段旅をしている中ではなかなか食べられないような料理の並ぶメニューにそれぞれどこか興奮したような表情になっていたり、黙っていても何だか嬉しそうだったりと彼らの表情はとても多彩だ。
やがて、料理が運ばれてくるとその楽しそうな表情がいっそう輝き始める。それぞれのテーブルで、各々自分が注文した料理を口に運んで舌鼓を打っている…勿論、中にはただ普通に食べるだけでは済まない者たちもいたりして。

「お、スコールのそれ美味そうだなー、一口くれよ」
「あ、おれもおれも」
「…俺の分が残ってないんだが」

一口と言いながらラグナとバッツの両方から大量にスプーンで掬って取っていかれ、僅かな量しか皿に残されていない料理を見てスコールが溜め息をつきそれを見てジタンがけらけらと笑っていたり。

「ねえクラウド、これ美味しいよ」
「…そうか、よかったな」
「一口食べてみて、ほら」

フォークに刺した料理をクラウドの方に差し出したティファと、表情ひとつ変えずに口だけを開けて差し出された料理を食べるクラウドの様子を見ながら一瞬あっけに取られ、何故か見ているほうが恥ずかしくなったのか皆が一斉にそちらから視線を反らしたり。

「ティナ、こっちも美味しいよ。良かったら半分ずつにしない?」
「うん、いいよ。私もそれ、美味しそうだなと思ってた」
「…ネギ坊主、正直に言えよ。お前ティナが食べてるの見てそっちが食べたくなっただけだろ」

珍しくヴァンに考えていることを見抜かれてしまったのが悔しかったのか黙り込んでしまったオニオンナイトを見ながらティナは優しく微笑んでいて、余った皿に自分の料理を半分取り分けていたり。

「デザートもあるんだね…色々ありすぎてどれも美味しそうで迷うなぁ」
「あ、じゃあ折角だし、オレとセシルとユウナで1つずつ頼んで3人でちょっとずつ分けるっスよ」
「じゃあわたしは…あれ、カイン…どうしたんですか?」

賑やかにデザートを選び始めた3人を横目で見ているカインにユウナが声をかけるがカインは何を言うわけでもなく…だが、その様子で気付いたのかセシルが笑顔のまま黙ってデザートのメニューを差し出し、自分も食べたいと思っていることをあっさりと見抜かれたのが恥ずかしかったのかカインが大きく溜め息をついたり。

「…もう一品注文していいだろうか、ここに書いてあるこれを…」
「どれだけ食べるつもりだ」

ウォーリアオブライトの目の前に山のように積まれている食べ終わった皿を見ながらとっくに食事を終えているライトニングが呆れたように一言。そしてそれに反応したかのようにメニューに手を伸ばしかけていたフリオニールが恥ずかしそうにその手を引っ込めていたり。

そんな賑やかな食事の時間を終え、一行はまた客席車両へと移動する。
すっかりと暗くなってはいたが相変わらず窓の外を流れる景色を眺めていたり…気付けばエルフ雪原にやってきていたのだろう、窓の外には宵闇に紛れて白いものがちらついている。
それでも車内で寒いと感じることはないあたり、きちんと暖房は用意されているようだ。何処へ向かうわけではなく、ただ出発して何処かで折り返して元の場所に戻るだけとは言えなかなかに快適なこの旅を一行はそれなりに楽しんでいた。
座席に座ったままカードゲームに興じる者も、荷物の中から魔法書を取り出して読みふけるものも、窓枠に凭れるようにしながらうたた寝をする者もいる。
気付けば夜は静かに更けていて、眠いと口にする者も始めはひとりふたりだったが次第に数が増え始める―


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