惑い、想い-1/4-






フリオニールの様子がおかしい。
ライトニングがそれに気付いたのは、ひずみの解放に加わって戻ってきた時だった。
18歳と言う多感な年齢であることもあってか、今までにもフリオニールは時々こんな風におかしな態度を取ることがあったのはライトニングもよく知っている。
大体その原因なんてのは些細なことで悩んでいたり、時にはなにやら悶々とした感情を抱えながらそれをライトニングにぶつけることが出来ずに態度が不自然になったりとその程度のものではあるのだが…
しかし今回は本当におかしいのだ。

まず、ライトニングを避けているようにすら感じる。
目もあわせないし近づいていっても「用があるから」等と言ってすぐに離れていく。
本当に用があるのなら仕方ないとしても、その後のフリオニールは何をしているかと言うと誰かと話すでもなくぼんやりとしていることが多い。

―一体…何があった?

少なくとも自分がひずみに入る前はフリオニールの態度は普通だった。
普通どころか、以前に一度挑んで準備不足がたたってか途中で抜けてきたひずみだったので、今度は気をつけろとしつこいくらいに繰り返してから送り出してくれたくらいだ。
それが、自分や仲間たちがひずみに入って出てきたらこの態度である。
ひずみに入っている間に何かがあったと考えるのが自然だが、では何があったというのか…ライトニングには全く想像がつかない。
なんせ、フリオニール以外の仲間たちは何も態度がおかしいところがないのだから。
何かあったのなら誰かことの顛末を知っている人間がいてもよさそうだがそんな者もいる様子はない。
いつもの仲間達、いつもの野営地。いつもと違うのはフリオニールだけ。

「…誰かを捕まえるのが一番早いか」

ひずみの解放に加わっていなかった者を捕まえて話を聞けば何かヒントくらいはつかめるかもしれない。
ライトニングは早速その足で、ふと視界に止まったユウナの元に向かった。


「うーん…私には心当たりはないです」

ひずみ解放に加わっていたティーダの手当てをしていた最中のユウナは首をひねりながらライトニングの問いにそう返した。

「またなんか悩んじゃってんじゃないっスか?アイツ、単純なくせに心配性だから」
「…それは私も知っているが、それにしても悩み方がおかしいと思うんだ」
「まあ、大体フリオニールって悩みだすとブツブツ言い出したりするのに今回それがないっスからねー」

ライトニングの発言を聞いて、ユウナの手で手当てを受けながらティーダも首をかしげる。
先の戦いではティーダとフリオニールは相当親しかったようで、今でも―ライトニングほどではないにせよ、ティーダがフリオニールと一緒に行動していることは多い。
無論ティーダは現場に居合わせなかったのでフリオニールに何があったか知る由もないのであるが、ティーダも全くのお手上げと言うことではライトニングに推測できないのも仕方のないことなのかもしれない。

「ユウナ、私たちがひずみに入っている間フリオニールが誰といたかは覚えてないか?」
「…ジェクトさんがティーダを訪ねて来たのでその応対はしていましたけど…」
「げ。オヤジ何しに来たんだよ」

ティーダの表情が心の底から嫌そうなものに変わる。
…なんにせよ、ユウナとティーダからはこれ以上の情報は得られない…だろう。

「邪魔したな」

ライトニングは踵を返し、次はやはり留守番組だったカインの元へ。
しかしその答えはあまりにもあっさりしたもので。

「…フリオニールのことでお前に分からないものが俺にわかると思うのか?」
「私はひずみの中にいたんだからその間のことは私には知る由もないわけだが」
「だからといって、俺も仲間全員の動向を見ていたわけじゃないさ…ああ、でも」

そこで一旦言葉を切り、思い出したかのように話を続ける。

「ヴァンと話していたのは見たような気がするから、ヴァンなら何か知っているかもしれない」
「そうか。とりあえずヴァンを探してみる…ありがとう、カイン」

短く礼を言うとライトニングはヴァンを探して足早にその場を後にした。
最初は早歩きだったが、カインの視界から消えるか否かのあたりでその足取りが駆け足になる―

「ライトニングも存外若い、な。本当に俺と同い年なのか?」

そんなカインの笑み交じり呟きはライトニングの耳には届かず、セシルが「楽しそうだね」と声をかけるに留まった。


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