からっぽの世界から-4/4-






しっかりと抱き寄せられたままフリオニールの頭を撫でるライトニングの手はきっと、今までどんな時に触れた彼女の手よりも優しく思えて―からっぽだった世界がライトニングによって満たされて、フリオニールの心に未だ巣食っていた絶望が綺麗さっぱり消え去っていく。
自分を見つめるライトニングの、瞳が宿した深い愛情がフリオニールを苛んでいたネガティブな感情の全てをかき消すように包み込んでいる。まるで、暗闇の中を照らす柔らかな光のように。
顔を上げてライトニングの方へと視線を移す―ライトニングの瞳に映る自分の姿は、どこか弱弱しくも見えるものの何故か落ち着いているようにすら見える。否、落ち着かせているのはきっと…自分を包み込むライトニングの腕の優しさ。

「こんな情けないところ、見せたくなかったんだけどな」
「私だってお前には随分と情けないところを見られているんだ、お互い様だろう」

頭から滑り降りた掌がフリオニールの背中を撫で、再び落ち着かせるように優しく背中が叩かれ―その優しさが、悪夢の中でフリオニールから零れ落ちてしまった強さを取り戻させる。
顔を上げて微笑むと、フリオニールはひたすらに自分に優しさを注いでいるライトニングの身体を強く強く抱きしめた。

「…ライトがいてくれてよかった」
「私だってお前がいてよかったと思うことが多いからな…お前もそう思ってくれているとしたら何よりだ」

そして、ライトニングの掌が三度フリオニールの背中を叩く。背中を叩いた手はそのまままたゆるゆると上に上がり、フリオニールの頭を撫で始めた。
くすぐったく、気恥ずかしいような…それでいて、何故かとても落ち着くようなその掌の感触に、フリオニールの頬が自然と緩む。先ほどまで絶望に捕らわれていたことなど、もうフリオニールの心の中には存在しない―

「もう一度寝たらいい…大丈夫だ、もしもまた悪夢を見たら、お前の夢の中まで私がお前を助けに行ってやる」

その言葉と一緒にライトニングが先に身体を横たえる。それに誘われるかのようにフリオニールも横たわると、ライトニングの掌が再びフリオニールの髪を撫でた。
そして、落ち着かせるようにフリオニールの身体を緩く叩く。まるで子供にそうするように―

「…ほんとになんか情けないとこ見せっぱなしだなあ、俺」
「どうせ立場が逆ならお前だって同じことを言うだろう?さっきも言ったがお互い様だ」

ライトニングの言葉には頷きだけを返して、フリオニールはゆっくりと目を閉じた。
今度はきっと悪夢を見ることはない気がする。自分をあやすように優しく触れるライトニングの手のぬくもりが、フリオニールの心に途方もない安らぎを与えていたから―


「なーんかさ、本気で変なことしてるよりもああいう現場の方が見ちゃいけない気になるのは何でだろうな」
「いちいち見に来ておいてその言い草があるか」

寄り添い合って眠るフリオニールとライトニングを見ているバッツとスコールがそんなことを言い合っていたことは、既に幸せな眠りの中にいるふたりは知らないまま。


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