からっぽの世界から-1/4-
仲間と共に行動することの多い彼らではあるが、時には何人かだけが仲間の元を離れたり、そもそもが数人ずつのグループに分かれて別行動を取ることもある。
その日は、宝の眠るひずみをいくつかピックアップして4人ずつに分かれ、ある程度宝を集めて次の日の朝にまた集合する―と言うことに決まっていた。
そしてその思惑通り、自分たちに割り当てられたひずみでそれなりに宝を集め、既に日が落ち薄暗くなりかけた森の中でどこか一晩夜を明かせるような場所を探して歩く4つの姿があった―
「でもやっぱこのグループ分けはないよなあ、おれたち完全にお邪魔虫だろこれ。なぁスコール」
「どのグループでも状況は似たようなことになっていたと思うが」
自分たちの背後で揶揄するように笑うバッツとそれに冷静に返したスコールの言葉にフリオニールはどう答えていいか分からずにひとつ息を吐いた。
そもそも、男ばっかのグループじゃ楽しくないとジタンが言い出したのがことの発端だったような気がする。
このため、4つのグループに分かれるのであれば女性陣は全員別々のグループに分けようと言う話になり―だが、そうなれば当然の如くクラウドはティファと、ティーダはユウナと、そしてオニオンナイトはティナとの同行を強く希望するわけで。
フリオニールはなんだか恥ずかしくてそこまで強硬に主張は出来なかったものの、当たり前のようにライトニングに「お前は私と一緒に来るんだろう」と言われたし他の仲間もそれが当然だとでも言うように話を進めていたのでそれに逆らうこともなく―
ヴァンは案の定オニオンナイトやティナと一緒に行きたいと言い出したしラグナは道に迷う可能性があるからウォーリアオブライトと一緒に行くべきだとか言われていたし、なんだかんだとすんなりグループ分けは決まって彼らはそれぞれに自分たちが割り当てられたひずみに向かうことになった…わけではあるが。
「つまらないことを言っている暇があると思っているのか?」
振り返って冷静に言い放ったライトニングの表情もやはりどこか辟易しているように見える。別に隠すつもりはないがいちいちからかわれるのは面倒だと常々言っている彼女らしいといえばそうかもしれなかったが…
何にせよ、目的は果たしているので今必要なのは疲れた身体を休めること、そしてその為に一晩ゆっくり出来そうな場所を探すこと…
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていたフリオニールだったが、ふとそんな彼の目に止まったのは岩肌にぽっかりと口を開ける小さな洞窟。
「なあ、あの洞窟…もしあんまり深さがないようなら、一晩野宿するくらいなら丁度いいんじゃないかな」
洞窟を指差したまま放たれたフリオニールのその言葉に、3人も同様にそちらに視線を移す。
「…確かに。イミテーションが住み着いていたりしなければ、雨風くらいは凌げそうだな」
「だな。ちょっとおれ、様子見てくる」
そう言って駆け出したバッツの背中を見送り、フリオニールはその近くを見渡す―森の中とは言え、岩山に程近いその場所は適度に開けており交代で見張りをしていればイミテーションが近づいて来ても気づかないということはないだろう。
生い茂る木々からも少し離れているので焚き火くらいならば問題はなさそうだし、自分の記憶に間違いがなければ集合場所へ向かうテレポストーンの位置からもさほど離れてはいないはずだ。
ちらりと視線を送るとライトニングやスコールも同じことを考えていたらしく、バッツの帰りを待つかのようにじっと洞窟の方を注視している―やがて、3人分の視線を一点に集めたまま洞窟からバッツが駆け出してくる姿が見えた。その表情は笑顔で、楽しそうに手を振っていて―どうやら、彼が持ってくるのは悪い知らせではなさそうだとその表情が物語っている。
「とりあえず、中はそんなに広くはなかったけど2人くらいなら普通に寝られるんじゃないかな。交代で見張りしながら2人ずつ寝れば丁度いいと思う」
にぃ、と笑ってみせたバッツに答えるかのようにフリオニールにも自然と笑みが浮かぶ。ライトニングとスコールは表情を変えることはなかったが、バッツの言葉にはしっかりと頷きを返すと自然と洞窟の方へと近づいていっていた。
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