私とワルツを-5/6-






それと同時に、再び聞こえ始めるピアノの音色。
まずはリードするようにフリオニールが一歩足を引き、それに合わせてライトニングが一歩足を差し出す。その動きはどこか覚束なくもあるが、フリオニールが動くことによってライトニングはそれに合わせるかのように足を動かす。

「次、回るから。右足大きく出して」
「…こう、か?」

フリオニールに言われるがまま、ライトニングは大きく右足を踏み出す。それに合わせるかのようにフリオニールは足を大きく引き、ライトニングの身体を引き寄せた。
引き寄せる腕の力が強かったのか、一瞬ライトニングの身体がバランスを崩すがすぐに態勢を立て直し、再びしっかりとフリオニールの身体に身を寄せるとまたフリオニールのステップに合わせるかのように足を踏み出す―
ぴったりと身を寄せているからこそ、互いに耳元で囁きあって次にどう動くかを相談している…きっとその声は、ピアノの音にかき消されて仲間達に聞こえてはいない。

「次、左…あ、ライトから見たら右」
「こっちか。次はどうすればいい?」
「次はライトが左に足引いて、そしたら俺そっちに回るから」

最初はどこかぎこちなかったものの、暫く踊っているうちにコツが掴めて来たのか次第にその動きも様になってくる。戦いの中で培われた運動神経のなせる業もあるだろう、それに…相変わらず、ピアノの音色に隠して互いに囁き合いながら次の動きを決め、ぴったりと呼吸を合わせることが出来るだけの信頼関係がふたりの間には存在していたから。
視線と呼吸をしっかりと合わせ、時に緩やかに時に大きくステップを繰り返し―やがて、バッツの奏でるピアノの音色が止まる。そこで、フリオニールとライトニングもぴたりと動きを止めた―それと同時に、仲間達から送られるのは割れんばかりの拍手と喝采。

「これは…流石、としか言いようが…」
「ね、息ぴったりだったよね」

セシルとティナが感嘆の声を漏らし、その言葉にフリオニールとライトニングは視線を合わせて小さく笑みを浮かべる―その様子を見ていたジタンからは別の声が飛んだりもして。

「で、いつまで抱き合ってるつもりだ?見せ付けてくれるなぁ全く」

その言葉に、しっかりとライトニングを抱き寄せた姿勢のままだったフリオニールは我に返ったように顔を真っ赤にし、慌ててライトニングの腰に回した腕を離した。そしてライトニングも、苦笑いを浮かべながらフリオニールの肩に添えた手をそっと離す。
その様子が余程可笑しかったのか、仲間達の間からは大きな笑い声が巻き起こる。
笑い声の中、そんな2人を見遣っていたカインがしみじみと呟いた。

「それにしてもフリオニール、『踊ったことがある程度』なんて謙遜していたがなかなか様になっていたじゃないか。きちんとライトニングをリード出来ていたし、繰り返しになるが…流石だな、お前達」
「いや、これはライトが合わせるのが上手かったからって言うのもあるさ。俺は別に特別何かをしたわけじゃない」
「…だが、フリオニールが的確に指示を出してくれたお陰できちんと踊れたというのはないわけじゃないからな」

謙遜の言葉で返そうとしたフリオニールに対して、ライトニングは素直な言葉を述べ…フリオニールは一度反らした視線をライトニングに戻し、はにかんだような笑みを向ける。
その笑顔に対して、ライトニングは深く頷いて見せただけだったが―それでもそこに感じ取れるのは、ふたりを繋いでいる深い信頼関係。
そんな2人を仲間達は…あるものは冷やかすように、あるものは羨ましそうに眺めていたがそんな中。


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