戦うさだめと青い空-2/3-






「なんかさ、こうしてると…戦いが続いてるってこと忘れそうになるよな」

空を見上げたままぽつりと呟く―その言葉は空に吸い込まれそうなほどにかすかなものではあるけれど。
だが、その言葉をきちんと聴きとめたのであろうライトニングの言葉がその後に続く―それは、普段とはどこか違う平和な空間において何処までもいつも通りなふたりの光景。
流れる時間はどこかゆったりとしていて、それが―愛する人と共に在ることの幸せを余計に強く感じさせている。

「…たまにはこうやって、心が安らぐ時間があってもいいだろう。私もお前も、他の仲間達も―元の世界にいたときからずっと戦い詰めだったのだから」

こんなことを言う時のライトニングは普段よりもずっと優しい声を出す気がする―フリオニールはぼんやりとではあるがそんなことを考えていた。
彼女自身、きっとそうだったのだ。戦いの中で生きてきた―ライトニング自身は元の世界の記憶をあまり残していないし、うっすらとだけ残った断片の記憶を繋ぎ合わせて考えても決して彼女が生きていたのは平和な世界ではなかっただろう。
勿論元の世界にだって仲間はいただろうし、こうやって少しは心安らぐ瞬間はあったことだろう。だからこそこの世界に―目的の見えない戦いの中、ほんの少しでも心を落ち着けられる瞬間があればいい。ライトニングにも、自分にも。
フリオニールはそんなことを考えながら腕を軽く持ち上げ、空に向かって手を伸ばしていた―

「何をしている?」

微かに笑みを含んだ声がして、首を動かしてライトニングの方を見る。
いつの間にか寝返りを打ったのか、ライトニングは自分の腕を枕にするかのようにして身体を横に向け、フリオニールのほうをじっと見つめていた。

「…澄み切った青空、って言うのがさ…なんだか凄く平和なものに思えて―俺が欲しいものはそんな、ほんの些細だけど…俺にとっては凄く遠いものなのかもしれないってふと、思ったんだ」
「お前らしくもない」

斬って捨てるようにそう言ったライトニングの表情は先ほどまでの笑顔とは違う、どこか厳しいものにも見えて―
ある意味においてはライトニングらしい、だがフリオニールに対して見せることは随分と減ったように思うその厳しい表情に、フリオニールは一瞬だけ視線を伏せた。
自分の発言の何かがライトニングの気に入らなかったと言うことだろうか―そんなことを考えても、結果が出ないまま。フリオニールが口に出来たのはただ―

「…俺らしくない、って言われても」
「例え遠くたって絶対に手にしてみせる…この世界にも、元の世界にも平和を取り戻してみせる。お前ならそう言うと思っていたんが…違うか?」

先ほどの厳しい表情が一転し、柔らかな笑顔へと変わる。
ライトニングの腕はゆっくりと伸ばされ、そしてフリオニールの頬に触れた。その手はいつものように暖かく、フリオニールの頬と心を包み込んでいた。
自分の夢を知っているから、その夢を一緒に見たいと言ってくれたライトニングの言葉だから―その暖かさと優しさは、平和な時間に安らぎを覚えるフリオニールの心を更に解してゆく。

「ああ―そうだな。この夢を叶えてみせる…この世界に花を咲かせて…青い空を取り戻す」
「…それでこそフリオニールだ」

満足げに笑うライトニングの表情から自分に対しての強い信頼を感じて、フリオニールはそれだけで何故かとても嬉しくなって―ライトニングと同じようにごろりと寝返りを打ち、横たわったままライトニングと向かい合う姿勢になった。
青い空の変わりにフリオニールの目に映るのは、自分を見つめるライトニングの空色の瞳―一瞬だけ思い浮かんだ気障な言葉を口に出しかけて、振り払うように小さく頭を振った。
その代わりに、腕を伸ばしてライトニングの頬に触れる。口にしなかった言葉を―フリオニールの中にある決意を確かめるかのように。
確かめた決意が、先ほど出しかけた気障な言葉の代わりに唇から滑り出る。その言葉ははっきりとライトニングに向けられている―


←Prev  Next→





SHORT STORY MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -