教えられた強さ-3/3-






「私のこの手は、お前を守る為にある」
「ライト」
「見た目だけならお前の腕に比べれば随分貧弱だし弱そうに見えるかもしれない。だがお前を守る為なら私は―何にだってなれる。そんな気がしている。無論、守らなければならないのはお前だけではないが」

呟いた言葉と共に、ライトニングは絡めた腕を解くと再びフリオニールの腕をなぞるように掌を滑らせる。慈しむように、大切なものを愛でるかのように。
くすぐったそうに笑いながら、フリオニールは自分の腕の上を滑るライトニングの掌をじっと見つめていた。

「そうだな…ライトは弱くなんてない。俺から見たら眩しいくらい、自分の意思をはっきりと持っていてそれでいて強い…って、俺は思ってる。それが俺を守る為だって言うんなら…俺ももっともっと、強くならなきゃいけないな。君を守る為に」

フリオニールの左腕に触れていたライトニングの手に、フリオニールの右手が重ねられる。
まるでライトニングを包み込むかのように、その掌は力強くて―その力強さが、ライトニングにはとても頼もしく思えて。

「俺はライトを守る…その上で、君が俺を守ってくれるって言うんならきっと俺たちは何にも負けたりしないかな、なんて」
「ああ…私はお前と、そして…お前がこの腕で守ろうとしているものを全て共に守ってみせる。流石に元の世界に還った後はそうもいかないが」

呟いた自分の声が自分でも想像していた以上に寂しそうに聞こえて…ライトニングは不意にフリオニールから視線を逸らす。
強くありたいと思っていたはずだったのに、何故だかフリオニールに対してとても弱いところを見せてしまったような…そんな、気がして。

「…例え元の世界に還ったって、今この世界でライトが俺にくれた強さは消えることはないさ…大切なものを守る為なら自分の身を顧みない、そんな無茶ができるくらい人は強くなれるってことをライトが教えてくれた」
「そんな大したものでもないが」
「でも、俺がライトに教えられたと思うことは多いなって思う…戦い方とか考え方とか、それに…誰かを愛するって事とか」

真っ直ぐにそう言い切ってから、フリオニールは照れたように視線を逸らす。
今この場で照れるべきは自分のような気がするのだが、と思いながらもライトニングはそのフリオニールの横顔をじっと見つめていた。
フリオニールが自分に教えられたことが多いというのなら…自分だって、フリオニールのその真っ直ぐさや素直さなど学ばなければならないことは多い、そんなことを思いながらただ…じっと、その横顔を見つめている。
そして…思いつくがまま、自分の衝動に任せるがまま…再びフリオニールの腕に腕を絡め、その肩にそっと寄り添う。

「ライト…」
「こうして近くにいるだけで教えられることは沢山ある…お前が私に教えられたことが多いというなら私はもっとお前の近くにいたいと思うし、そうすることによって私もお前から何かを教えられることもあるだろうと思っている」

それは勿論、フリオニールだけではなく。
自分が弱いのではないかと思ってしまっていたときにそれをユウナが否定してみせたように、他の仲間からも学ぶこと、教えられることは多い。
だが、一緒にいる時間が長い分フリオニールから教えられることが多いのもまた事実―

「…と、言ってはみたものの」
「ん?」
「ただお前と一緒にいたい…そのことに対しての言い訳に過ぎないのかもしれないが、な」

ほんとうの本音を小さく呟いて、ライトニングはフリオニールの肩に寄り添ったまま絡めた腕の温かさを確かめるように目を閉じた。
きっと、この世界でなければ出会うことはなかったから。
そんなフリオニールのことをもっと知っていたい。その為にもっと近くにいたい―とても単純なその答えも、きっとまたライトニングにとっては「守らなければならないもの」なのかもしれなかった。


←Prev  →





SHORT STORY MENU / TEXT MENU / TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -