教えられた強さ-2/3-






そして、その次の日。
他の仲間がひずみに向かっている―今日は解放するためではなく、一度解放したひずみに宝を探しに行くと言うことだったが―その隙を狙って、いつものように武器の手入れをしているフリオニールに近づいていった。
ライトニングの気配に気づいているのかいないのか、フリオニールは熱心な表情で短剣の刃を磨いている。
真剣な横顔に声をかけるのが一瞬憚られたが、思いなおしたようにひとつ咳払いをするとフリオニールの横顔を眺めながら口を開いた。

「フリオニール、ちょっといいか…邪魔なら別に構わないが」
「俺がライトを邪魔なんて言うわけがないだろ?」

それまで随分熱心に武器の手入れをしていたようだったが、ライトニングの声に気づいたのかフリオニールはすぐに顔を上げてライトニングにいつもの屈託のない笑顔を向ける。
ライトニングは自然とフリオニールの隣に腰を下ろし、じっとその姿を見つめていた―言葉を発しないライトニングに、フリオニールは不思議そうに首をかしげる。

「どうしたんだ、ライト?俺の顔に何かついてるか?」
「いや、顔じゃなくてだな」

さて、話すと決めたはいいもののどう切り出せばいいものか。
言葉を選ぶようにしながら、ライトニングはじっとフリオニールを見つめていた…が、何も言葉にしないままその腕にそっと手を添える。
ライトニングの手に触れるフリオニールの腕は、自分のそれとは明らかに違う。
しっかりと盛り上がった筋肉の、太さはあるのに引き締まったその独特の固さを確かめるようにライトニングはフリオニールの腕に指を滑らせた。
急に触れられたことで、フリオニールの表情には困惑にも似た表情が浮かぶ。

「…ライト?」
「こうして見ると随分太さが違うと思わないか?」

ライトニングの視線は、掌で触れるフリオニールの腕と、並ぶ形になっている自分の腕を見比べるように交互に動いている。
その言葉に釣られたのか、フリオニールも同じようにライトニングの腕と自分の腕に交互に視線を送っていた。

ライトニングが気にかけていたこと―
自分だって戦士だと言うのに、戦っていると言うのに自分の腕はあまりに細く頼りなく見えるのではないかと、フリオニールを見ていて思うことがあったのだった。
しっかりと鍛えられたフリオニールの腕と―フリオニールだけではなく、他の仲間と比べてもなんだか見劣りする気がして、それがどうにも気になって仕方なかったのだ。

「言われてみれば…確かに」
「そう考えると、どうも私はお前や他の仲間に比べて自分が非力なのではないかとふと気になった。だが、ユウナに言われたことがあって」
「うん」
「…私たちの手はそれぞれが自分にしか守れないものを守る為にある…だから、誰一人として『弱い』なんてことはない」

ユウナの言葉をそのまま反芻するように呟き、ライトニングは添えただけだったフリオニールの腕にそっと自分の腕を絡めた。
フリオニールの表情が、まずは驚きに。そして焦りに、やがて照れに彩られていく―くるくると変わるその表情を眺め、そして体温と共に伝わってくるフリオニールの逞しさにライトニングは無意識に目を細める―
腕が絡み合い、ぴったりとくっついたことで…その太さの違いは余計に際立って見える。だが、今のライトニングにとってはそんなものは些細なことでしかなかった。
その「些細なこと」よりも、今自分がフリオニールに告げなければならないことがある。


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