教えられた強さ-1/3-






ライトニングがその事実に気づいたのはいつだっただろうか。
もしかしたら戦いの最中その姿を見ているときだったかもしれないし、何か重いものを運んでいる時だったかもしれない。はたまた、熱い時を過ごし熱が冷めるまでの間ただ抱きしめられていた時だったかもしれない。
はっきりとは覚えていないが、それでもライトニングはずっとなんとなく思っていることがあって…
今日もそのことを思い出し、ライトニングは自分の一歩前を歩くフリオニールの姿をじっと見つめていた。
勿論、見た目なんてものは人間にとってほんの一面にしか過ぎないわけだが―どうしても、フリオニールを見ているとつい思い出す「こと」がある―

「…どうしたんだ、ライト」
「いや、大したことじゃない」

誤魔化すようにそう言って、ライトニングはフリオニールから一度視線を外した。
フリオニールは微かに首を捻っていたが、仲間が待っていることを思い出したのか何事もなかったかのようにまた歩き始める。
大したことではない、それは確かにそうなのだが―そのことをフリオニール本人に言うのはどうにも躊躇われていた。
別に何が恥ずかしいというわけではない。こんなことを言うよりも恥ずかしい姿など既に何度も見られている自覚だってある―だが何故か、気づいたことを口にするのは憚られてなんとなく言えないままでいた…


「ライトでもそんな風に思うことがあるんだね」

いつものように女性陣がテントの中で集まっている時にふと「そのこと」を口にすると、ティナが驚いたようにライトニングのほうを見る。
言葉にしたのはティナだったが、ユウナもティファも一様に驚きの表情を浮かべていた。

「ライト『でも』とはどういう意味だ」
「ああ、そう言う変な意味じゃなくて」

そんなつもりはなかったが、出た言葉はライトニング自身にも自分が想像していた以上に不機嫌そうに聞こえて…流石に悪いと思ったのだろうか、首を小さく振りながらティナはにこりとライトニングに笑いかけてみせる。

「ライトは私たちから見たらいつも…なんて言うんだろうな、凄く自分に自信があるように見えて。戦ってる時のことでも、フリオニールのことでも。だから、フリオニールに言えないことなんてないんじゃないかなって思ってた」
「…基本的にはあまりそんなことを思ったりはしないんだがな…認めてしまうことで、なんだか自分がフリオニールより弱いんじゃないかと思ってしまうと…どうも、口に出せないというか」
「別にライトは弱いわけじゃないとは思うけどね。まあ、あれだけの武器を重いとも言わずに持ち歩いてるわけだし多分単純な力で言えばフリオニールの方が強いんだろうけど」

くすくすと笑いながらティファはそう言い、その言葉にユウナがふと思いついたように腕を上に向かって伸ばす。
そのまま掌を広げてみせ…その手を、テントの上に吊るしたランタンを掴むかのように柔らかく握ってみせた。

「私たちの手はそれぞれ、自分たちにしか守れないものを守る為にある。私にとってはそれがみんなだったり、ティーダだったり―私だけじゃなくてみんなそう。だから、私たちは誰一人として『弱い』なんてことはない。私はそう思っています」
「…ユウナ、いいこと言うね」

感心したようにティナがぽつりと呟き、それぞれが顔を見合わせて頷きあった。
やはり、この4人で話していると自分ひとりでは到底思いつかなかったことを誰かが口にして…それが、とても面白いとライトニングは常々思っていた。
そして、ライトニングはもう一度思いなおしていた―やはり、フリオニールに話してみよう、と。
この話をした時に、フリオニールはどんなことを言うだろうか。それが不意に気になった―から。


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