夏の色は海の色-4/6-
一方その頃、砂浜から少し離れた岩場。
軽く3メートルほどはあるであろう高さの岩の上に、気づけば男性陣が集まっていた。
「よし、じゃあ行くぞ!」
そう言って岩場の上で助走をつけ、大きく踏み切るとヴァンは海に向かって大きく身体を躍らせ―大きな水柱を上げ、その身体は水の中へと飲み込まれる。
数秒の時間があって水面から顔を出したヴァンは仲間達に向かって大きく手を振る。
「うん、意外と怖くないぞ。皆も飛び込んでこいよ」
「よし、じゃあ次は俺が」
何の迷いもなくそう言うと、フリオニールは先ほどのヴァンと同じように岩の上を軽く走り岩から飛び降りる。ヴァンより体格が大きいせいか、上がった水柱もヴァンのそれよりも大きい。
そしてやはり数秒して水面にフリオニールの顔が浮かび上がる。その表情は心から楽しそうな笑顔。
「さ、次は誰が来るんだ?」
「ラグナが行くはずだったんだが助走しようとして足が攣ったみたいだな」
「こら、バラすなスコール…あいててて」
呆れたように腕を組んだままのスコールと蹲るラグナを横目で見遣りながら、悪戯っぽい笑みを浮かべたジタンが岩場の後ろの方で黙って立ち尽くしているバッツの方に振り返る。
「水の中で足が攣ったら大変だし、ラグナはやめといたほうがいいだろ。…ほら、バッツ行けよ」
「嫌だよ、なんでわざわざ高いところから飛び降りるとかやらなきゃいけないんだよ」
バッツが高所恐怖症だと知っていて飛び込ませようとするジタンも相当に人が悪い、のかもしれない。
そんな2人のやりとりを横目で見ながら、カインが一歩分足を引いた。
「誰も行かないなら俺が行くぞ」
呟くとカインは助走をつけずその場で大きく飛び上がる。全員が上空高く舞い上がったカインの身体を視線で追っていたが、やがて勢いをつけてその身体が海面へと向かって急降下してくる。
普通に飛び上がっただけでは確保できない高度からの飛び込みに、他の仲間達がいる岩の高さを遥かに超えた水柱が上がり―最後尾にいたバッツまで含めた全員が頭から水飛沫を被り、水面に顔を出して濡れた長い髪を軽く頭を振って整えたカインをじっと見つめている。
「…なんだ、俺の顔に何かついているか」
「カインあのね、こんなところでそんな本気出さなくていいんだよ」
岩の上から身を乗り出し、水面から岩の上を見上げているカインにセシルが冷静に一言。同じように濡れ鼠になりながら、仲間達は一様にうんうんと頷いていた。
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