夏の色は海の色-2/6-






「あ、皆もう着替え終わってるんだ」

その声に男性陣が視線を送ると、そこに立っていたのは淡いピンク色の、一見すればワンピースであるかのように見える水着を身に纏ったティナ。
腰には大きなリボンがあしらわれた可愛らしいワンピースの胸元からは身体にぴったりとしたラインの水着が覗いている。

「おぉー!ティナ、かっわいいじゃん!なんかこう、女の子らしくていいねー!」
「ありがとう、ジタン。お世辞でも嬉しい」

賞賛の言葉を素直に受け取ったのか、ティナは小さく微笑んでみせる…が、それを不機嫌そうな表情で見上げているオニオンナイトの姿がそこにあるのはまあ、予想の範疇と言えばそうかもしれない。
しかしその直後、オニオンナイトが表情を変えずにジタンの足を踏むところまでは誰も予想していなかっただろうが。

「痛てっ!何すんだよお前!」
「まったく油断もすきもない…ところでティナ、他の3人は?」
「もうすぐ来ると思うんだけど…」
「ごめんなさい、遅くなって」

話しているところに現れたユウナは、青いパレオを身につけている。大きな花柄が涼しげでどこか爽やかで清楚な印象を与える…それはまるで、彼女自身を現しているかのように。
丁度ウォーミングアップと称してボールと戯れていたティーダは姿を現したユウナを見て満面の笑みを浮かべてそちらに駆け寄った。

「ちょ!ユウナめちゃめちゃ似合ってる!すげー可愛い!」
「ふふ…ありがとう、ティーダ」

照れたように笑いながら、ユウナは先刻まで自分がいた岩場のほうに視線を送る。つられた様に、その場にいた全員がそちらに視線を移した。
それに呼応したかのように、再び聞こえる足音…姿を見せたのは、ライトニングだった。
左肩から胸元にかけて大きく開いたトップスからはちらりと黒い水着が覗き、腰周りを覆う短いスカートからは引き締まった長い脚が伸びていた。

「ライトはこれまたセクシーなイメージで…うんうん、いいねいいね」
「ジタン、今度はフリオニールに足踏まれたいの?」

表情を緩ませるジタンを見上げてオニオンナイトが呆れたように一言。話題の中心にいるフリオニールは砂浜の方で、セシルと一緒になって準備運動に勤しんでいたのでその一連のやり取りには気づいていないようではあったが。

「それにしてもティファ、随分遅いですね」
「ひょっとして…まだ苦戦してた?」
「ああ。あの調子だともう暫くかかるかもしれない」

女性陣のそんなやり取りを聞いて、その場にいたジタンやオニオンナイト、ティーダは一様に首を捻る。たかだか水着に着替えるだけで一体何を苦戦すると言うのだろうか…
その様子に顔を見合わせて女性陣が苦笑いを浮かべ、そんなことをしている間にその場にはフリオニールとクラウドが近づいてきた。
視界にライトニングを捕らえたのだろう、フリオニールは微かに頬を赤らめながらもその水着姿を注視している―そんなフリオニールの様子に再び苦笑いを浮かべながらも、ライトニングはそのフリオニールへと視線を送った。

「何か言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ?」
「うん、似合ってるよライト。凄く綺麗だし、それに…」

その先はもごもごと口ごもってしまい言葉にならなかったが、それでもフリオニールは目の前にあるライトニングの姿を眩しそうに見つめている。
ある意味いつもの通りと言うか、それに対して仲間達が咎め立てすることもとくにはなかった、が。

「ところでティファはまだか」
「なんか良くわかんないけど何かに苦戦してんだってさ」

ジタンの言葉に、クラウドは首を捻る…そこへ、ティファが着替えているのであろう岩陰から聞こえてくる声。

「ああもう、もういいっ!」

その声は間違いなくティファのもので、まずはクラウドが、そして他の者達がそちらに視線を移す―そしてそれに誘われたかのように、岩陰からティファが姿を現した。
上半身は黒のビキニトップ、両方の胸の間にはゴールドのリングがあしらわれている。それに厚手のショートパンツを合わせた水着は普段から肌の露出が多いことを差し引いても相当に扇情的な格好で。

「…ああ、結局着なかったんだ…上」
「だってどんなに頑張っても胸で引っかかって下まで降りないんだもん。もういいやーって思って」

あっけらかんとそう言うティファの右手にはタンクトップらしきものが握られている。…どうやら先ほどから「苦戦している」と言っていたのはそのタンクトップを身につけることに対しての話だったらしい。

「とりあえず、皆行こう?折角海に来たんだから楽しまないと、ね」

一番遅れてきたことを感じさせないような笑顔でティファが走り出し、そのティファを迎えにやってきたのであろうクラウドがその後に続く。
ティーダはユウナの手を引き、オニオンナイトは時々ジタンを睨みつけながらもティナの一歩前に立って歩き始めた。
そしてフリオニールも、どこか気恥ずかしそうな表情を浮かべながらもライトニングを見つめにこりと微笑みかける。

「俺たちも行こうか」
「ああ、そうだな…それにしても何故お前が恥ずかしそうなんだ」

苦笑いを浮かべながらも、いつもの如く堂々と胸を張って歩き出したライトニングの一歩後ろに続くかのようにフリオニールも歩き始めた。
流石に言葉には出来ないが、水着姿のライトニングはいつも以上に魅力的に見えて…何故かそれで照れてしまうフリオニールであった。


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