夏の色は海の色-1/6-






「光の戦士さんたちにモグネットからお届けものですクポ」

ある朝、設営したテントを片付けていた戦士達のもとに紙包みを持ったモーグリが現れた。
世界各地にいるモーグリたちはこうしてネットワークを形成しており、時折戦士達の元にはこの世界では珍しいと思われるものが届けられることがある。
それは彼らが元いた世界にしかない物資であったり、どの世界で使われているのか誰も分からないがなんだか便利なものだったり。そう言えばテントや調理器具もモグネットから届けられたような、そんな気がする。

「で、今日は何が届いたの?」

ウォーリアオブライトが包みを開いたのを後ろからティファが覗き込んでいる。
他の仲間達も興味津々と言った様子で眺めていたが、ウォーリアオブライトが手にした淡いピンク色のワンピースのようなもの、を目にした瞬間全員の動きが止まる。

「…女性用の衣類のようだが」
「あんたがそんなもん手にしてるって、不似合いにも程があるな」

苦笑いを浮かべたジタンは横からひょいと包みを覗き込み、そして他に入っていたものをひょいと手に取る。そして手にしたものを広げて、ぽつりと一言。

「これ、水着なんじゃね?ほら、下のほうに男用のも入ってる。それと、浮き輪とかボールとか色々と」
「水着?なあ、もしかして全員分あったりするっスか?」

その言葉に、ティーダがぱっと嬉しそうに表情を輝かせた。そしてその言葉に呼応したかのようにジタンが入っているものを数え始めた。
暫くジタンが数え終わるのを全員が待っていたが、数え終わった後暫し指を折り、そして顔を上げたジタンの表情は先ほどのティーダと同様に楽しそうなもので。

「女の子用が4人分と男用が11、それに子供用が1。うん、全員分入ってる」
「…子供用ってもしかして僕用ってこと?」

オニオンナイトだけは不満げに眉を寄せていたが、ジタンのその言葉に仲間達は皆一様に嬉しそうに表情をほころばせ始める。確かにここ最近、随分と暑い地域を旅していたのだ。そんな中水着が届いたとなれば、皆が考えることは一つ。

「いい機会だし、海に遊びに行く…なんて、いいんじゃないかな。たまにはリフレッシュするのも大事だと思うよ」

代表してウォーリアオブライトに告げたのはセシル。ウォーリアオブライトはふむ、と短く呟くと腕を組んで何事か思案し始めた。

「そう言えばこの近くに海水浴が出来そうな海岸があったな。いいだろう、次に解放するひずみもまだ見つかっていないし今日は1日休息の日として海水浴に向かうことにしよう」
「さっすがリーダー!話が分かるっスね!」
「はっきりと言えば私もこの暑さには辟易していたのだ。暑さで戦意を削がれ戦いに支障をきたすくらいなら1日くらいは休息するのもいいだろうと思ったのでな」

そう呟いたウォーリアオブライトが微かに苦笑いを浮かべているように思えた…が、真面目な彼ですら辟易するほどの暑さなのには間違いがなく―戦うことに対して使命感を感じているウォーリアオブライトがすんなりと許可を出したことで一行はほんの少しだけ、身を焦がすその地の暑さに感謝したのであった。
ともあれ、一行は野営地から程近い場所にある、ウォーリアオブライトが「海水浴が出来そうだ」と言っていた海岸へと足を運んだのであった。


「私たちが着替え終わるまでこっちに来ちゃダメだからね」

釘を刺すようにそう言って、水着を手にした女性陣は岩場の影に隠れる。こそこそと着いていこうとしたジタンの首根っこをクラウドが押さえているのはまあ、いつも通りの光景と言えばそうかもしれない。
男性陣もその間に、草むらに隠れて水着に着替え始めた。とは言え男性陣は服を脱いで水着に履き替えるだけなので然程の時間もかからず。

「…なんで僕の水着だけ名前を書くところがあるんだろう」
「子供用だからだろ?」
「じゃあ何で僕のだけ子供用なの…って言うか誰、僕が着る前に『ネギ坊主』って書いたの!!」

文句を言いながらいち早く着替えを終えて海のほうへ向かうオニオンナイトとヴァンを先頭に、続々と着替えを終えて男性陣は海岸へと向かう。
女性陣がまだ出てきていないことを考えると、着替えにやはり時間がかかっているのであろうか。

「ラグナ、きちんと準備運動しておけよ。水の中で足が攣ったら危険だ」
「…ああ、お気遣いありがとうスコール君。でもな、おじさん今まさに足攣ってるんだわ…いててっ」
「…きちんと解しておけ」

なんて会話をしているスコールとラグナを横目で見たりもしつつ、それぞれ準備運動をしてみたり砂浜で走り回ってみたり。
男性陣が一通り揃い、一番乗りだーなんて言いながら海のほうへ走っていくバッツとヴァンの姿を見送ったところで岩場のほうから足音が聞こえてくる―


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