キオクノカタチ-2/3-






「俺の、元いた世界の記憶?」
食事を終えたところでライトニングはテントへ戻ろうとしたフリオニールを呼び止める。
唐突に「元いた世界のことをどのくらい覚えているか」とライトニングが切り出したものだからフリオニールは最初は驚いていたものの、しかし彼はライトニングが殆ど元の世界の記憶を残していないことを知っている。
恐らくそれが何か関係あるのだろうなと言うことはすぐに理解したらしく、先刻セシルとオニオンナイトが並んで座っていた倒木に腰掛けるとフリオニールはぽつりぽつりと語り始めた。

「…俺の両親は戦争で死んだ…ってのは前に話したよな」
「ああ。それをきっかけにして、お前が戦争を引き起こした帝国に楯突く反乱軍に所属するようになったということも聞いた」

ふむ、とフリオニールは腕を組み、それから少しずつ言葉を繋ぎ始める。

「でも、ライトには結構話してる気がするからなあ…反乱軍に動物の言葉が分かるヤツがいたとか言う話はしたっけ?ビーバーと会話してたり」
「それは初耳だしある意味とても気になるがまた今度聞こうか」
「あー、あとただで船に乗せてもらったら…あ、いや今のなし。この話はちょっとカッコ悪くて聞かせられない」
「そう言うことを言うと私が余計気にするとは思わなかったのか?…まあ、お前が話したくないのなら無理に聞きだすことはしないが」

ライトニングはそこで腕を組み、ゆっくりと思案を始めた―
フリオニールは元の世界の記憶を殆ど取り戻していると言っても過言ではないだろう。
…しかし、そう言えば…フリオニールの口から出てきたことがない話題がひとつ、あった。

「あとはそうだな…ライト?」

話を続けようとしたところでライトニングが思案していることに気がついたのか、フリオニールは心配そうにその顔を覗き込んでいる。

「どうかしたのか?」
「ああ、大したことじゃない」

フリオニールの元の世界の話は確かに気になる。それはまた、今度時間があるときにでもゆっくり聞きたいとは思う。
しかし、今こうしてフリオニールの話を聞いてみてひとつ、ライトニングにははっきりと分かったことがあった。
自分の顔を覗き込むフリオニールの瞳を真っ直ぐに見つめ返し、ライトニングははっきりとした口調で言葉を繋ぐ。

「私は自分に元いた世界の記憶が殆どないことを寂しいと思うことが時々あった…だが」

そこでライトニングはフリオニールから視線を外し、少し離れたところで楽しそうに話しているティナとオニオンナイトに視線を移した。
ティナにもオニオンナイトにも元の世界の記憶はない…だが彼らはああやって、この世界の暮らしをそれなりに楽しんでいる風に見える。


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