その愛のかたち-3/3-






それは今、思い悩むフリオニールに対して…と言うよりも、自分が正しいと思ったことのためにフリオニールを傷つけた過去の自分に対してはっきりと言わなければならないことであって。
一度だけ目を閉じ、自分の中に浮かんだ答えをはっきりとした言葉として頭の中で組み立てなおす。開かれた瞳に映るのはただ、フリオニールの姿だけ。
それは誰よりも愛しく誰よりも大切で―そして、誰よりも側で見守っていたい、ライトニングにとってはかけがえのない存在。
未だにどこか躊躇っているようにすら見えるフリオニールの頬に触れたまま、ライトニングははっきりと言い放った。

「だから今の私は、お前が私のことを思い出した以上責任を持ってお前の側にいる。そう言うことだ」
「ライト」

顔を上げたフリオニールは、ライトニングのその言葉に目を丸くする―驚いたようなその表情に、ライトニングは笑顔を返してからしっかりとその頬に触れ、瞳を真っ直ぐに見つめる。
手放してはいけないと思っている、離れるつもりなど毛頭ない。その理由は至極簡単なことで―それしか手段がなかったからこそそうしただけで、本当は選んではいけなかったのかもしれない選択肢で。
そのことを自分に言い聞かせるかのように、ライトニングは言葉を続けた。

「愛するものを失う悲しみを二度とお前に与えたくはない…から、な」

頬に触れた手を、フリオニールの右手へと移す…先ほどからフリオニールが見つめていた指輪に、ライトニングは自然と触れていた。
きっとこの指輪をフリオニールに託したという人物も同じ事を考えていたからフリオニールに口止めをしたのだろう。
告げようとした相手が自分のことを愛していると分かっていたから、余計に―重荷になりたくないと思ったのだろう。
それがなんとなく分かるせいだろうか、ライトニングが触れた指輪は何故か微かに暖かく感じられて―そこに秘められていた人の想いと、それを大切に胸の奥にしまい続けてきたフリオニールの優しさを感じてライトニングは微かに微笑みを浮かべた。
その微笑みを見て、フリオニールは小さな声でぽつりと呟く。

「…俺、さ」
「ん?」
「まだ、誰かを愛するって事…良く分かってないのかもしれないな。ライトの方が俺なんかより、あの人の気持ちを理解できてるし」

微かにフリオニールが浮かべた苦笑いに、ライトニングは首を横に振ってみせる。
ライトニングにだって理解できたのは自分が同じ立場に立ったことがあるからと言うだけの話なのだから、フリオニールが悪いとかそう言う問題ではない…それをどう言葉に纏めるべきかと考えていたが、至極簡単な言葉がひとつあることにライトニングは気がついた。

「…だが、私を愛しているということにかけてはお前の右に出るものはいない、だろう?それで充分だ」

微笑みを浮かべたまま、ライトニングはフリオニールの肩に手を置きぽんぽんと軽く叩いた。
それに釣られたかのようにフリオニールには笑顔が浮かぶ―その笑顔だけで、もしかしたら充分なのかもしれなかった。

「ああ。それに関しては誰にも負けないよ―俺はきっと、世界中の誰よりライトを愛してる。それに…君に、愛するものを失う悲しみを与えたくないのは俺も一緒だから」
「それならそれでいい」

微笑みを交わし合ったふたりの間には、しっかりと結ばれた強い絆がある―時に迷い、道を失いかけても愛するものが側にいる、そのことが自分の強さになる。
そのことをふたりとも知っているからこそ…互いのその想いを確かめ合うように、その視線は力強くお互いだけを捕らえていた。


←Prev  →





SHORT STORY MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -