知らぬも言わぬもそれぞれに-5/5-






フリオニールはどこか困ったような表情を浮かべていたが、去ってゆくライトニングの背中にちらりと一瞥を送り再び口を開いた。

「誤解のないように言っておくけど、俺もライトも誰にも言ってないんだ。でもなんでかみんな知ってたから…ティーダも知ってるものだとばかり」
「オレがそんなの自力で気づくわけないだろ」

苦笑いを浮かべながらティーダはそこでひとつ息を吐く―フリオニールに対して水臭いと怒ってはみたものの、別にフリオニールの側にはそんなつもりは一切なかったのだから溜め息もつきたくなるわけで。

「っつーかいつの間にライトニングとそんなことになっちゃってたんスか」
「…ずっと前…多分、カオスを倒したあの戦いよりも前、だと思う…ライトのことしか思い出せなかったからはっきりとは分からないけど」
「でもフリオニール、ライトニングのこと覚えてないって…」

ティーダの問い返しに、フリオニールはそこで気まずそうに目を逸らす。それについては、言われても仕方ないと思っていたのだろう。

「あれは…ライトにそう言えって言われてたんだ。ライトのことしか覚えてないけど、同じ世界から来たわけでもないライトのこと『だけ』覚えてるのは不自然だから、って」
「…もしかして結構尻に敷かれてんスか、フリオニール」
「うるさいな」

拗ねたように呟いたフリオニールがなんだか可笑しくて、ティーダはそこで声を上げて笑う。
釣られたかのようにフリオニールも笑い出し、暫くその場には2人の笑い声だけが響いていた。
やがて落ち着いたのか、ティーダは長く息を吐く。そして…少し気分が楽になったところで気になっていたことを口に出した。

「つーかさ、何がどうなってあのライトニングとそんな…なあ?」
「俺、ライトと約束してたことがあるんだ。その約束を守らなきゃって思って一緒にいるうちに気づいたらライトのこと好きになってて…ライトも、俺を好きになってくれた」

何かを思い出すように、懐かしむようにフリオニールはそんなことを口にする。
その表情にはどこか、ティーダの見たことのない「強さ」が宿っている気がした。それはきっと、先刻セシルが言っていた―「好きな人が側にいる」事で生まれる強さ、なのかもしれなくて。
フリオニールも今は自分と同じ、愛する誰かを近くで守りたいと思っている―そう思うと、ティーダは何故だかフリオニールに親近感を覚えていて―

「…誰にも言うつもりはなかったけど…こういうの、悪くないな」

ぽつりとフリオニールが呟いた言葉に、ティーダは一つ大きく頷いていた。
勿論仲間意識はずっとあったが、こうやって…同じ話題を共有できることで、ほんの少し絆が強くなったような、そんな気がして。


余談。

ユウナに「後で話す」と約束していた為、その日の夜にティーダはフリオニールと話したことをかいつまんで説明したのだが…そのときに返って来たユウナの答えが

「…あれ?ティーダ、気づいてなかったんだ」

だったので、ティーダは自分はどれほど鈍いのかと改めてがっくりと肩を落としたのであった。


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