知らぬも言わぬもそれぞれに-4/5-






…やはり、ライトニングとフリオニールの間に何かあると言うのは考えすぎだろうか、と思いたくもなる程度にはライトニングの声は冷静で。

「それは寧ろ俺が聞きたいんだけど…」
「まあいい。話がある…ついてこい」

ライトニングは視線の動きだけで人気のないほうを指し示して歩き出す。
フリオニールは戸惑うような表情を浮かべながら、ひとつ頷くとライトニングの後に続いて歩き出し…数歩進んだところで、ティーダの方を振り返った。

「…何のつもりかは知らないけど、あんまり人をつけまわすなよ」
「へいへい、分かったっスよー」

口ではそう答え、ライトニングの後ろに続いて去っていくフリオニールの背中を見送る…が、勿論本当にそれだけで終わるティーダではない。
ふたりの背中が小さく、見えなくなりかけたところでティーダはその後を追って歩き出していた。
見つからないようにつかず離れずの距離を保ち、遠巻きにふたりの様子を眺めている。
やがて、視界の先に海が見え始める―あまり近づいてまたフリオニールに気づかれてもいけないが、しかしこの距離では会話が聞こえない。
さてどのくらいまでなら近づいても大丈夫だろうか…そんなことを考えながらティーダは岩陰に隠れ2人の様子を見守っていた。
その瞬間、ライトニングが振り返る―その表情は、ティーダが見たことのないような笑顔。そしてその笑顔は真っ直ぐに、フリオニールのほうへ向けられている。
笑顔のままライトニングの腕がフリオニールのほうへ伸びる。そして、当たり前のようにその腕がフリオニールの肩に回され、ライトニングが目を閉じ―微かに、フリオニールが背中を屈める。
その状況からはフリオニールの背中しか見えないが…それでも分かる。今、フリオニールとライトニングが何をしているのかくらいのことは。

「ちょっ、ま…マジで…?」

岩陰にしゃがみ込んでいたティーダは思わず立ち上がりその光景を凝視することしか出来なかった。
勿論、なんとなく想像はしていた。他の仲間とは考えにくいのだから、フリオニールが恋をしているのだとすればその相手はライトニングなのだろうと。
しかしそれでも、あの純情なフリオニールが…人目につかないところを選んでいるようだとはいえ、ここまで堂々とキスシーンを展開するなんて想像もしていなかった―
二の句が告げないティーダはそのまま隠れることを忘れてそこでぼんやりと立ち尽くしている―だから、いくら遠くとは言えこちら側を向いているライトニングが目を開けた瞬間、自分の方へ視線を送ったことに気づいた瞬間慌てて背中を向けることしか出来なくて。

「ティーダ!」

ライトニングがそのことを伝えたのだろうか、遠くからフリオニールの怒りを孕んだ声が聞こえてくる。
それと共に近づいてくる足音…ティーダは相変わらず、背中を向けたまま。

「つけまわすなって言っただろ!それよりお前…まさか、今の…」
「見てたっスよ。…って言うか聞いてないんスけど、フリオニールがライトニングと…そんな関係だったとか」
「当然だろう、言っていないんだから」

フリオニールと一緒にこちらにやってきたのだろうか、ライトニングの声は相変わらずどこか冷たくティーダを突き放すようにすら感じる。
そんな風に言われてしまってはティーダのほうはそれ以上反論が出来ない―だがそれでも、そこで黙ってしまうこともティーダには出来なくて。

「…水臭いっスよ、オレ…フリオニールのこと、勿論仲間だとも思ってるけど…年近いし一緒にいた時間長いし、ただの仲間じゃなくて…友達だって思ってたのに」
「ティーダ」
「ジタンやセシルは知ってて、オレだけ聞いてないとか…すげーショックだったんだからな」
「フリオニール。どこまで話すかはお前に任せる」

ライトニングは呟くようにそう言うと、野営地の…仲間達の方へ向けて歩き出していた。

「…ライト?」
「残念ながら私は女だからな、男の友情って言うやつは良く分からないんだ。だからお前に任せた」

そのまますたすたと歩き去っていくライトニングの背中を、見るともなく見ていたティーダであったが…まだ自分の背後に立っているのであろうフリオニールが大きく溜め息をついたところでそちらを振り返った。


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