知らぬも言わぬもそれぞれに-3/5-






その時ふと、ティーダの頭に過ぎるひとつの「考え」。
ユウナでもない、ティファでもない。多分ティナでもない。そうなると答えは自然と―

「いやでも…まさか、なあ?」

どことなく近寄りがたい空気をかもし出しているライトニングをもう一度見遣り、それから仲間達の輪の中…ウォーリアオブライトと何事か話し合っているフリオニールの方へと視線を移す。
かつて一緒に戦った仲間の中で自分以外の誰もがユウナの存在をはっきり覚えていなかったのと同じように、ライトニングのことを覚えていた者もいなかったように思う。
ティーダは幸いにしてユウナからある程度彼女の人となりを聞くことが出来たが、それでもライトニングとの間にはどこかまだ距離があるように感じるし―自分のように、誰かからライトニングのことを聞く事が出来なかった仲間はもっとそう思っていることだろう。フリオニールも、多分。
そんな微妙な距離がある状態で、「あの」フリオニールがライトニングと親しくなることなど全く考えられない。

「…でも…他の子ではありえないし…となるとやっぱり…」
「ティーダ、もうすぐご飯できるよ…って、どうしたのティーダ?」

振り返ったユウナが不思議そうに首を傾げているのを見て、ティーダは首を横に振った。
だが、その時ティーダの心の中にはなんだかもやもやとしたものが残ったままだった。

「…決めた」
「決めたって、何を?」
「まぁその…ユウナにはまた後で話すからさ」

きょとんとしているユウナに対しては誤魔化すようにそう言って、ティーダは走り出した。
作戦を考えなくてはいけない。直接聞いたってはっきり答えるフリオニールではないだろうし、正直に言えばまだそんなに親しくないライトニングに聞くことも出来ない。
それならば何をどうするのが一番いいのか―そして、ティーダが出した結論。

「…ティーダ、お前何してるんだ」
「いやその、オレのことは気にしないで欲しいっス」

何やらクラウドと話し合っているらしきフリオニールの丁度背後あたりにあった岩に隠れているつもりだったティーダはあっさりとフリオニールに見つかって誤魔化すようにそんなことを言う。
無論フリオニールの側からすれば気にするなと言われても、と言ったところだろうがそんなことはティーダはお構いなしだ。

「ささ、話続けて続けて」
「…続けてって言われてもなぁ」

フリオニールは首を捻りながらも、再びクラウドとの会話に戻る。
そう、ティーダが思いついた方法とは…フリオニールがうっかり口を滑らせるのを待つ為にフリオニールの会話を全て盗み聞きすると言うものだった。
勿論本人に見つかっていて盗み聞きもないものだが、ティーダの側はそんなことはお構いなしと言った風情でフリオニールとクラウドの会話に聞き耳を立てていた…が、どうにもこうにもそんな話が出る気配がない。
フリオニールとクラウドは暫く何事か話していたが、話が終わったのかフリオニールはクラウドから離れて歩き出す…その後ろを堂々とついていくティーダを、呆れたようにクラウドが見送っていたことにティーダは気づいていない。

その後フリオニールはオニオンナイトやスコールなどと少しずつ会話をしていたが、それでもやはりその会話の中でライトニングの名前が出ることはない。
相変わらずフリオニールは自分についてきているティーダを不審なものを見るような目で見ているがそれを気にしている場合でもない。

「ティーダ、さっきから何なんだ」
「いや、オレのことは気にしなくていいから…」
「…何をやっているんだ一体」

何度目かの誤魔化しの言葉を出しかけたところで、フリオニールに声をかけたのは…ライトニング。
相変わらずどこか冷たくも聞こえる声で、腕を組んだままフリオニールを真っ直ぐに見上げている。


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