知らぬも言わぬもそれぞれに-2/5-






そして、その日の夕刻頃。
食事当番に当たっていたユウナが料理に精を出しているのを後ろでぼんやりと眺めているティーダの隣にセシルがやってくる。

「どうしたの?そんなにユウナが気になる?」
「って言うか、ユウナの近くにいたいんスよ…って」

ティーダはいつものように頬を掻きながらセシルから視線を外す。
セシルもジタンと同様、元いた世界に愛する人を残してきている―しかもセシルは結婚している、とくればやはりセシルだって寂しいという思いがあるかもしれない。
それに気づいて視線を彷徨わせていたティーダだったが、思いついたようにぽつりと呟いた。

「やっぱ、セシル…奥さんに会いたいっスか?」
「そりゃあ会いたくないって言ったら嘘になるよ。でも、帰ったらまた一緒にいられる。そう考えたら、離れてても頑張らなきゃって思えるし力になってくれてるって考えることにした」
「大人っスねー、セシル」

感心したようにセシルの横顔を見つめ、ティーダは感嘆の息を吐く。

「セシルと比べたらオレ、まだまだガキなのかも」
「でも、好きな人と一緒にいたい、守りたいって気持ちだって大切だと僕は思う」
「やっぱ恋する力って強いんスね」

ティーダの言葉に、セシルは笑顔を浮かべて頷いた。そして、どこか遠くに視線を送りながら一言…

「好きな人が側にいることで強くなれるって言うのはあると思うよ。ティーダもそうだよね、それにクラウドやフリオニールを見てても…」
「は?フリオニール?」

セシルの口から出てきた名前がティーダの中では今までの話題と繋がらない。
自分は多分フリオニールと一緒に行動していた時間はそれなりに長い。だからある程度色んな側面を見ているが…
フリオニールと言えば、ティナと話すときでさえ躊躇う素振りを見せるほど女性に慣れていないし、女性型の召喚獣を使う時にも視線のやり場に困っているようだし、そんなフリオニールと「恋愛」がどうにも繋がらない―

「…あれ、もしかしてティーダ…気づいてなかったの?」
「ちょ、セシルまで!気づいてないって何なんスか!」
「ティーダが知らないってことはフリオニールは自分からは言ってないってことだよね。じゃあ…僕の口からは言えない、ごめん」

小さく首だけを下げて謝る仕草を見せ、呼び止める間もなくセシルはそそくさと立ち去っていく。
しかし、ジタンの言っていたことと今のセシルとの会話を合わせて考えればそれはとても簡単な話…つまり、フリオニールは誰かに恋をしている、と言うことで。
そのことを言われるまで気づかなかったというのもある意味情けない話ではあるが、フリオニールはそんなことは一言も言っていなかった―

「…でもそうだとして、相手誰だ?」

呟いたティーダが視線を最初に送った先は…ユウナ。
まずユウナではありえない。なんせユウナは自分の恋人だ。フリオニールだってそのことは知っているし、そんな相手に恋をするとは到底思えない。と言うよりも思いたくない。
次に視線を移した先は…クラウドと一緒にいるティファ。この世界に戻ってきてから初めて知ったのだが、彼女は元の世界にいたときからクラウドとは特別な関係であったようで…ユウナと同じ理由でティファも除外していいだろう。
ティーダの視線はうろうろと仲間達の間を彷徨い―目に映ったのはオニオンナイトと仲よさそうに話しているティナの姿。
…ティナとフリオニールは同い年だし、可能性はなくもないが…あれだけオニオンナイトがべったりくっついていると言うのにそのオニオンナイトの存在を無視してまで果たしてフリオニールがティナを好きになるだろうか?

「…頭グルグルしてきた」

考えても答えは出ないまま、ティーダは一度仲間達の方から視線を外して遠くを見遣る…丁度そこには、他の仲間からは離れて何か考え事をしているらしきライトニングの姿があった。
ライトニングはどこを見ているわけでもなく、大きな岩に凭れたまま腕を組んで何事か考えている。
その雰囲気はどこか他の仲間を寄せ付けないようにすら感じさせる何かがあって―


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