心を濁す弱ささえ-4/4-






ライトニングは自分の目の前で、このあまりにも短時間の間に起こった出来事が理解できずフリオニールを呆然と見つめている―それに気づいたのか、フリオニールは笑顔を浮かべてライトニングに歩み寄ってきた。
歩み寄ってきたフリオニールの身体にはもうどこにも傷など見受けられない。先ほど受けた斬傷から流れ落ちこびりついたままの血がところどころに残っている程度だ。

「…フリオニール、お前…今のは…」
「ああ、そうか。ライトには見せたことなかったっけ…って言ってももう元に戻っちゃってるか」

驚きの表情を浮かべたままのライトニングに説明するように剣を抜くが、そこにあるのはいつも通りのフリオニールの剣で―どう説明したものかと迷っているのだろうか、剣を再び鞘に収めるとフリオニールは一度だけ上方に視線を送り、すぐにライトニングの方へ視線を戻した。

「ブラッドウェポンって言って…傷つけた相手の力を奪って癒しの力に転化できるんだ。まぁ、使うにはそれなりの準備が必要ではあるんだけど」
「…その準備が整ったから『考えがある』と言ったんだな。私はてっきり、また無理してがむしゃらに突っ走るのかと…」
「君に影響が出るかもしれないこの状況で何も考えずにそこまで無茶はしないさ―今の俺は、ライトを守らなきゃいけないんだから」

ライトニングに向けられるのは笑顔と真剣な眼差し…何故だろう、その顔が見られない。
フリオニールが強いことも頼りになることも充分良く知っているつもりだったが、こんな時…自分がふと弱気に捕らわれてしまった時にそんな一面を見せられてしまっては…
そもそも、ライトニングは自分でもいつも言っている。守られてばかりと言うのは性に合わないと。
それならば共に戦い、フリオニールが自分を守るというのならば自分はフリオニールを守る。そうして互いの背中を守りあう―その方が自分には合っているとライトニングは常々思っていた。
だが…今のフリオニールになら。
強がることも気を張ることも必要ない…今は、今だけはフリオニールの強さと真っ直ぐさに甘えていたかった。

「それなら…暫くはその言葉に甘えさせてもらう。この傷が癒えるまでは」
「ああ…たまには甘えてくれていい。俺…頼りなく見えるかもしれないけど、こんなときくらいはライトに頼りにして欲しい」

自分自身の傷も微かに薄らいだように思うが、まだ思うように戦えるようになるには程遠い。
守られるだけなんて自分には似合わない、それは分かっていても…今のフリオニールの力強さ、頼もしさに甘えるのも悪くない―ライトニングはほんの少しだけそんなことを思い、フリオニールの隣に並ぶ。
フリオニールはしっかりと頷いて、それからライトニングに向かって手を差し出した―まだ、歩くのがやっとと言うライトニングの状態を見透かしているかのように。
ライトニングは何の迷いもなくその手を取り、フリオニールに支えられるようにして歩き出した。
自分を支え守ろうとするその力強さが―他に頼るものがない今、ライトニングにとっては何よりの拠り代になる。そんなことをなんとなく考えていたことを、きっとフリオニールは知らない。


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