心を濁す弱ささえ-2/4-






「お前だって傷ついているんだ、これ以上負担はかけられない…それに」

視線が自然とフリオニールから外れたのは、脳裡に浮かんだ言葉があまりにも自分らしくなくて…
それが思い浮かんだのは、目の前にいるのがフリオニールだったからと言うこともある。恋人に対しての甘えなど、戦いの場では不要―普段はそう思っているが、それでもフリオニールになら強がりを捨ててこんな姿を見せても構わないと言う信頼があるからこそ。
だからだろうか、きっと他の仲間の前でならとどめていたであろう言葉がライトニングの口からは当たり前のように滑り出してくる。

「…このまま進み続けてどちらかが倒れてしまうくらいなら、ここで引き返した方がいいんじゃないかなんて思ってしまう…私らしくないとは自分でも思うが、それでも私はあっさり負けるのは嫌だしお前が倒れるところは見たくない」

フリオニールの表情がそこで急に厳しくなり、壁に凭れたままのライトニングの身体はフリオニールの腕に包み込まれるように抱きしめられる。
こんな時に何を、と反論するよりも先に耳元で聞こえたフリオニールの言葉は…厳しい表情とは裏腹に、どこか優しくも聞こえた気がした。

「大丈夫…君を守る為なら俺はまだ戦える。そう簡単に倒れたりしない」
「…いつも言っているだろう、守られているだけなんて御免だ…お前がそう言うなら、私だって戦うしかなくなるだろう」

フリオニールの胸元に手を添え、無理やりに笑顔を作ってみせる―自分を抱きしめる腕が傷口に触れて微かに痛みを覚えるがそれよりも何よりも、フリオニールの腕の力強さにほんの少し安心したのも事実。
いつもの強気な言葉に安心したのだろうか、フリオニールもまた笑顔を見せると抱きしめた腕を解き、ライトニングの身体をそっと離した。
そしてすぐに表情を引き締めると、ぽんとライトニングの頭に一瞬だけ触れる。

「でも、暫くはライトは下がってるんだ…今はこれ以上戦える状態じゃないだろ?」
「流石に見抜かれていたか…だがそれはお前だって」
「大丈夫、俺に考えがある…上手く行けばそれでいいし、上手く行かなかったらそのときに考える」

傷を庇うように歩き始めたフリオニールの背中を追って、ライトニングも歩き始める。
やはり無理はさせたくないし、フリオニールがもしも致命傷を負いそうになったら無理やり庇ってでもフリオニールだけは助けた方がいいだろうか、などとやはりいつもとは違う後ろ向きなことを考えながら歩いている―そこへ、感じる敵意。
通路の向こう側から現れた敵は―ほぼ半裸に黒い衣を纏ったそれが誰なのかは良く分からないがそれでも明らかにこちらに敵意を向けている。
フリオニールは何の躊躇いもなく剣を抜き放つと、ちらりと一瞬だけ背後のライトニングに視線を送ってその敵の前へと身を躍らせた。

「…無理はするな、フリオニール…」

祈るように呟かれたその言葉はフリオニールの耳には届いていないのだろう、間合いを詰めるフリオニールの背中を見ながら、ライトニングはすぐにでも飛び出せるようにと武器を握る手に力を込めた。


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