そのぬくもりで確かめる…-4/4-






「自分の方が深手を負っているのに私を心配している場合じゃないだろう」

ライトニングは自分の腕を掴んでいたフリオニールの左手を振り払うと、短い言葉で魔法を詠唱する。
先ほど自分の傷を癒すのに使ったケアルの魔法を今度はフリオニールに向かってかける。完全とは言えないがそれでも多少傷が薄らいだのを確認すると、ライトニングはフリオニールの左腕を取って早足で歩き始めた。
フリオニールは黙って腕を引かれたまま歩いている。暫くの間、2人の間に言葉はなかった…が、先に口を開いたのはライトニング。

「…スコールとセシルからお前が怪我をしたままはぐれたと聞いて私がどれだけお前を心配したか分かってるのか」
「ごめん…その、怪我してたってのもあって、この辺のイミテーションは強いしなるべく気づかれないように回り道してたらものすごく遠回りになって」
「答えになっていないだろう。大体、私は謝って欲しいわけじゃない」

なんだかフリオニールの顔が見られなかったのに、その段階に至ってやっとライトニングは首だけを傾けてフリオニールのほうを見据える。
困ったような表情でライトニングを見つめているフリオニールに、ライトニングは大袈裟にひとつ息を吐いた…そして。

「大体…怪我してるのにそれを省みずに、私をかばう為に飛び出してくる奴があるか。私はそんなに心配されるほど弱くはないし、それに」

そこでライトニングは一度足を止め、フリオニールの方へと向き直る。
突然立ち止まったライトニングをフリオニールは戸惑ったように見つめていたが、その視線を真っ直ぐ跳ね返すかのようにじっとその顔を見つめ返しながら…ライトニングは一気にまくし立てた。

「今回は盾で攻撃を止められたからよかったようなもののそれで余計に傷が深くなっていたらどうするつもりだったんだ?そもそも、今のお前は仲間とはぐれて一刻も早く合流しなければならない立場だろう。私なんかに関わっている場合じゃなかったんじゃないのか」
「…でも、イミテーションと戦ってる仲間を無視することなんて出来るわけがないだろ?それが…自分の恋人なんだから、余計に」

その答えはある意味予測できていた―と言えるかもしれない。なんせ、相手はフリオニールなのだから。
フリオニールがそう言う性格であることはライトニングだって充分良く分かっている。だがそれでも、言わずにいられないのは…それもまた、ライトニングの性格なんだと言うことをフリオニールもきっと理解しているだろう―それは推測でしかないが、しかしライトニングの中ではほぼ確信に近くて。

「だが、私の為にあまり無茶をするな。お前が私を心配しているように私だってお前を心配しているんだと言うことをもうちょっと理解してくれ」
「…うん、ごめん」

短く述べられた詫びの言葉に一先ずは満足したようにライトニングは頷くと、無理やりに腕を掴んでいた手を解いて代わりにぎゅっと手を握る。
握った手はすぐに強く握り返され、そこに感じる確かな暖かさにライトニングは安心したように小さく微笑んだ。

「…皆心配しているしお前の傷も治さなければいけないし、早く帰ろう…と言いたいところだが」

ライトニングはそこでもう一度足を止め、フリオニールのほうへと振り返った。
きょとんとした表情でライトニングを見つめているフリオニールに、ライトニングは小さく微笑みを向け…繋いだ手を離すと、フリオニールの背中にそっと腕を回してその身体を包み込むように抱き寄せた。

「…ライト…?」
「お前を探している間本当に不安で仕方なかったんだ…だから確かめさせて欲しい。お前がここにいることを」

ライトニングの発言に、言葉は返ってこなかった…その代わり、フリオニールの腕がライトニングの背中に回る。
フリオニールの肩に頭を預け、言葉以上にはっきりとしたその答えを確かめるようにライトニングは目を閉じた―魔法では癒せない、心の疲れをそっと癒すかのように。


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