そのぬくもりで確かめる…-2/4-






野営地で仲間達がそんな会話をしている頃。

「フリオニール!どこだ!」

あたりの様子を窺いながら、ライトニングは平原を駆け回っていた。
…フリオニールとはぐれた、ただそれだけの話なら別に放っておいても問題はないだろう。子供じゃないんだから、そのうち自力で戻ってくるだろうし。
だが、フリオニールは怪我をしていたとセシルが言っていた…その状況のフリオニールを放っておくことは流石にライトニングには出来ない。

「フリオニール…返事をしろ、フリオニール!」

走り続けるライトニングの表情に浮かぶのはいつもの彼女らしくもない動揺。
勿論、無計画に走り回っただけでフリオニールが見つかるとはライトニングも思っていない。だが、それでも…足を止めることは今のライトニングには出来ない。
もしも、自分の知らないところでフリオニールに何かがあったら…そう考えるといてもたってもいられなくて、ただライトニングはフリオニールの名前を呼びながら走ることしか出来なくなっていて―
フリオニールを一刻も早く見つけ出さないといけない…呼吸が乱れても額に浮かんだ汗が頬を伝っても、ライトニングはそれすら意に介することなくただひたすらに走り続けていた。
そしてただ、ひたすらにフリオニールだけを探していたから…だろうか。普段の彼女であれば絶対に犯すことのない失態を犯していたことにすら気づかなかったのは―

「っ、くっ…!」

背中に感じた衝撃に、自分が今イミテーションから攻撃を受けたのだと言うことにようやっと気づく―そう、普段ならばイミテーションの気配に気づかないわけなどないのに。
それだけフリオニールを探すのに夢中に、必死になっていたと言うことだろうか…
己の失態に気づいたライトニングは小さく舌を打つ。そして身を翻し、イミテーションの気配を感じた方向へと振り返った。
そこにいるイミテーションは純然たる敵意をライトニングに向けている―しかもどうやら、このあたり一帯にいるイミテーションがそうであるように、純粋な実力だけの話をするのであれば恐らくライトニングよりも上。
ライトニングは小さく舌打ちすると武器を抜き、意識をイミテーションの方だけに向ける。
フリオニールが気にかからないわけではないが、今気を抜けばやられるのは自分だ―そう、自分に言い聞かせながらライトニングはイミテーションとの間合いを計る。
この距離であれば近づく前に魔法で牽制した方がいいだろうか…頭の中で戦いを有利に運ぶ方法を組み立て、ライトニングは素早く魔法を詠唱し―その瞬間、ライトニングの正面から大きな水の塊が放たれイミテーションのほうへと真っ直ぐに向かってゆく。
しかしイミテーションはこともなげにその水の塊を防ぎ、跳ね返す。そして先ほどライトニングが放ったはずの水の塊が今度はライトニングを襲う…!

「ぅあっ!」

衝撃に耐え切れず、ライトニングの身体は大きく上方へと吹き飛ばされる―それを追って近づいてくるイミテーションの気配を感じ取ったライトニングはすかさず体勢を整え、再び魔法の詠唱に入った。
ここで自分が倒れているわけには行かない。フリオニールを探し出さなくてはならないのだから―!!

「凍てつけ!」

ライトニングの掌から放たれた魔法の冷気はイミテーションの近くで氷の塊となり、その塊がイミテーションを襲う…しかし、イミテーションはあっさりとその魔法をかわし、すぐに体勢を立て直すとライトニングに向かって突撃してきた。
とっさにライトニングはその攻撃に備えて防御姿勢をとるが予想された攻撃は襲っては来ない。様子を窺うため一瞬防御体勢を解いた瞬間に、イミテーションはそれを待ち構えていたかのようにライトニングに向かって剣を振り下ろした。
瞬間的なものでそれをとっさに回避することは出来ず、ライトニングの右腕をイミテーションの剣が強かに斬りつける。

「くっ…!」

切りつけられた傷口からは血が流れ、ライトニングの腕を伝ってぼたりと地面に流れ落ちた血液が痕を残す―
利き腕に傷をつけられたくらいで戦えなくなるほど柔ではないが、それでも武器を取った右手に微かとは言いがたい違和感を覚える。それでも今は戦わなければならなくて、ライトニングは眉を顰めながらもしっかりと武器を握りなおし、その視線にイミテーションを捕らえる。
この距離であれば魔法で戦うよりも直接イミテーションを攻撃した方が早そうだ、瞬時にそう判断して剣を構える。
イミテーションがこちらに迫ってきている、今ならばその隙を突くことも可能―そう考えるよりも、身体が動いた方が早かった。


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