まどろむ夢がくれるもの-2/4-






年下だとはいえ体格は自分より随分と大きいし…他の仲間ほどではないが、それなりに大人の考え方を持っている。そんなこともあって、フリオニールは18歳と言う年齢をあまり感じさせないのだがそんなフリオニールが見せた無防備な寝顔…不意に、胸の奥で何かが締め付けられるような不思議な感情がライトニングを襲う。
…きっと、ライトニングは自分自身では気づいていない。今、フリオニールの寝顔を見つめている自分がどんな表情をしているのか。
今のライトニングには柔らかな微笑が浮かび、その表情は言葉にするのならば慈愛に満ち溢れた笑顔を浮かべてフリオニールを見つめている…それはともすれば彼女らしくない、かもしれない。
ライトニングはただただ、眠るフリオニールの髪をゆるゆると撫でている。その無邪気な寝顔には微かに笑みが浮かんでいて、一体どんな夢を見ているのだろうとライトニングに思わせるには充分なほど幸せそうに見えて。
その幸せそうな寝顔がなんだか妙に愛しく思えて、ライトニングは髪を撫でていた手を頬にそっと移した。
しっかりと引き締まった精悍な顔立ちが、微かに幸せそうに緩んでいる…眠っているフリオニールは絶対にそんなことは意識していないだろうが、フリオニールがそれだけ自分に心を許しているように思えて…それが今のライトニングにはとてつもなく幸せなことに感じられた。
話があったはずなのに、今のフリオニールを起こして話をするよりはただこうしてフリオニールの寝顔を見つめていたい。そんなことを考えながら、ライトニングはそっとフリオニールの頬を撫でる。

「…ん…ライト…」

名を呼ばれ、起こしてしまったかとライトニングは一度手を引っ込める―しかしそんな様子はなく、フリオニールは引き続き幸せそうな寝顔を浮かべたまま眠りこけていた。
名前を呼ばれたのは寝言だったのか、と気がついて…ライトニングは一瞬驚いた自分が無性に可笑しくなってくすくすと笑いながら再びフリオニールの頬に触れた。
どんな夢を見ているのだろうと言う先ほどの考えの答えは今の一言ではっきりと―自分の夢だということが分かったわけで、それもまたライトニングに強い幸せを感じさせる。
相も変わらず幸せそうな寝顔ですうすうと寝息を立て、時折言葉にすらなっていない程度の声を発する…そんなフリオニールを、何故だろう…可愛い、とライトニングは思っていた。
勿論フリオニールだって大の男だし、面と向かって可愛いなんて言ったら嫌がるのだが…勝手に思うくらいは許されるだろうし、それに今のフリオニールを表現するのに「可愛い」と言う言葉以上にしっくりと来る言葉が思い浮かばないのも事実で。
その寝顔を見つめていると、また…そこまでは言葉にならなかったフリオニールの寝言がはっきりと言葉になって紡がれる。

「…すきだ…ライト…」

たったそれだけの、それも夢うつつに呟かれただけのその言葉がライトニングの心を擽る。
ありとあらゆることに対して真っ直ぐなフリオニールは自分への愛情も真っ直ぐで、照れながらとは言え好きだとか愛してるとか普通に口にする。
だが、しっかりと目を覚ましているときに言う言葉ではなく…こんな風に、無意識の領域で呟かれたその言葉が不意打ちでライトニングの胸の奥に何か甘酸っぱい感情を呼び起こしていた。

「知っているさ…それに、私だってお前を愛してる、フリオニール」

眠ったままのフリオニールにこの言葉は多分届かない。それは分かっていてもどうしてもその言葉を言わないわけにはいかなくて。
それでもライトニングの言葉にフリオニールが微かに笑ったような気がして…フリオニールの頬に触れたまま、ライトニングは再びその寝顔をただ見つめていた―ほんの一瞬、視線を離す事すら惜しいように思える。
そうしてフリオニールに触れたままのライトニングの頬をそっと風が撫でる―ほんの些細なことなのに、それがなんだかとても幸せなことのように思えるのは何故だろう…?

どのくらいの時間、そうやってフリオニールの寝顔を見ていたかは分からない。
時々寝言を言うフリオニールの頬や髪を撫でながら、とても緩やかでとてもひそやかな幸せの時間をライトニングは誰にも邪魔されずに楽しんでいた…
その時。不意に、眠っていたはずのフリオニールがゆっくりと手を動かし…自分の頬を撫でるライトニングの手にその手を重ねた。

「ライト…」

呟かれた寝言と共にその手は引き寄せられ、手の甲に口付けられる。その感触はいつもライトニングが感じているものと全く同じで。
ふと見れば先ほどまで閉ざされていた瞼はうっすらとではあるが開き、その奥にはどこかぼんやりとしながらもライトニングにとっては見慣れた琥珀色がうっすらと覗いている。


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