優しい時間-2/3-






店を出たところで気づいたのは、しとしとと降り始めた雨。
無意識にライトニングとフリオニールは顔を見合わせ、そして揃って空を見上げた―いつもより更に厚い雲が空を覆っている。簡単にこの雨は止みそうにはない、ようだ。
フリオニールは何の迷いもなさそうに、ショップで購入した武具やアクセサリの類を全て手元に引き寄せると手早くマントを外し、ライトニングの頭からマントを被らせた。

「…フリオニール?」
「風邪引いたりしたら大変じゃないか」

ぽつりと呟くと、一度手元に引き寄せた武具を抱え上げてフリオニールは走り始める…ライトニングはその後に続いて、フリオニールから遅れることがないように走り始めた。
雨は激しさを増す一方で、ライトニングはいつしか足場の悪い中で重い武具を抱えているせいかどうしても速さが出ないフリオニールに追いついて…後ろに続いて走っていたはずなのに隣に並んで走っていた。

「この調子だとどこかで雨宿りした方がよさそうだな」

隣でライトニングがそう声をかけると、フリオニールも小さく頷いて雨を凌げる場所を探し始める。
そして2人の視界に止まるのは、うってつけに大きな木。その枝は力強く張られていて葉も茂っていて、一時的に雨を凌ぐ程度であれば特に問題なさそうに見えた。

「あの木の下ならどうだろう」
「そうだな、とりあえずライトは先に行っててくれ」

確かにフリオニールに合わせて走っていてはたどり着くのが遅れてしまうだろうが、そんなところで自分に気を使わなくていいのに…と思いながらライトニングはフリオニールの横顔を見上げている。
フリオニールもそれに気づいたのか、小さく首を振って視線だけで先に行くように促した。

「俺もすぐ追いつくから。あんまり長い時間雨に当たってると身体が冷えるだろ?」

あまりにフリオニールがそう言うので、ライトニングはひとつだけ頷くとフリオニールよりも先に木の陰へと逃げ込んだ―それから暫く遅れて、武具の類を抱えたフリオニールが同様に駆け込んでくる。
頭からフリオニールのマントを被っていたライトニングはさほどでもないが、フリオニールの方はその髪の毛から水が滴るほどずぶ濡れになってしまっている―
フリオニールは手にした武具の数々を足元に置くと、額から滴っていた雨の雫を掌で拭っていた…ライトニングはすっかり水を吸っていたフリオニールのマントを外し、きつく絞りながらフリオニールのほうを見つめる。

「大丈夫か、フリオニール」
「ああ、俺は大したことないから…それよりライトは大丈夫か?」

この状況で、荷物も殆ど持たずマントを被せられた自分の心配をするあたり…フリオニールは相当のお人よしか相当の心配性か、それともそれほど心配したくなるほど自分が愛されているのか。
答えがどれなのか分からないながらも、ライトニングはああ、と短く返してフリオニールを見上げて…ふと思い立って、フリオニールの後頭部に手を伸ばしてバンダナを解いた。

「ライト?」
「水気を切れるものは切っておいたほうがいいだろう」

解いたバンダナを手に取ると、そのままぎゅっと絞る。こちらも相当水気を含んでいたようで、ライトニングの足元にぼたぼたと水滴が落ちた。
ふと横を見ると、フリオニールは結った髪を解き、ふるふると頭を振って水気を払っていた。
まるで子犬か何かがそうするように見えて、ライトニングはそれが可笑しくてつい笑いが零れてしまう。
笑うなよ、と拗ねたように呟いたフリオニールは…先ほどまで自分を雨から守ろうとしていたときとは別人のようにさえ見えて、それが余計にライトニングの胸をくすぐった。
いつもフリオニールはこうだ。時に強く逞しく、ふとした瞬間に子供のように無邪気な表情を見せる―
そのフリオニールがたまらなく愛しく思えて、ライトニングはごくごく当たり前のようにフリオニールの背中に腕を回していた。


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